サッカーとハート :クラブの伝統2006-09-13
少し充電期間を・・・。
気がついたらもう9月・・・この間に色々な事があった。
前期授業が始まって終わって・・・学生サッカー春季リーグが始まって終わって・・・ドイツワールドカップが始まって終わって・・そして夏休み突入・・・。夏休み期間中には天皇杯県予選・各種フェスティバルと続き、平行して国体のチーム強化・関西トレセン行事・JFAの仕事・・・。あっという間の6ヶ月・・・。
多くないとは思うがこのコラムを読んでいただいている方々がいるとしたらたいへん長らくお待たせ。この間、ネタを仕込みたくさんの話題を提供・・・と行きたいのだがどうもゆっくり机の前に座れない。優勝至上命令を言い渡された国体本番が目前に迫るという状況の中、同時並行で始まる後期授業の準備がいまだ出来ずにいる。『こころコラムにあらず・・・』ではいけないと思いつつも今は大学のマリンスポーツ実習で徳島の海と格闘。雨・強風の悪天候の中、海に向かって船をこぐ・・・どうも心、ここにあらず・・・何もかもが中途半端になってはいけないと思いつつ目の前のことに集中。すると夜はぐったり。ぐっすり寝るとコラムが書けず・・・と行きたいのだがこれまた睡眠が中途半端。
結局、得意の愚痴か・・・・。
少し古いが春季リーグのひとコマから。
4回生・・・
関西学生春季サッカーリーグが4月〜5月上旬にかけて行われ、我が大学は2部Aリーグにて準優勝を勝ち取り、1部8位関西学院大学との入替戦に挑むチームを決める代表決定戦に進出。Bリーグ2位の関西外国語大学と対戦した。ゲームプラン通りに進む部分とそうでない部分が理由も含めはっきりわかる試合を展開。2-2から延長戦を戦うも決着はPK戦へともつれ込んだ。結局4-2で敗戦を喫し入替戦に進出できなかった。初めて4学年揃った2006年がスタートし念願の1部昇格は秋季リーグに持ち越された。同時に私が就任した獨協大学サッカー部を一緒に押し上げてくれた4回生に1部での試合経験をさせてやれないことも決定。悔しさ倍増・・・後悔が多くなったリーグだった。
精神的ダメージのあるミスは同じミスでも絶対にしてはいけない
関西学生リーグ2部Aブロック2位 vs Bブロック2位との戦い、つまり全体の3・4位決定戦となるのだがそこで勝てば1部8位(10位は自動降格、9位は2部総合2位と入れ替え戦)との入れ替え戦に進出できる。負ければ総合4位で2部残留となる。我々は結果4位となり関西学院大学との入れ替え戦に進出できなかった。まあ、結果的なことは別にせよここでも教訓を得た。
後半15分過ぎから相手がトーンダウンしてくるというスカウティング情報によりそこまでは我慢、60分からが勝負・・・つまり前半は0-0でOKと戦い方を指示。しかしながら前半中頃に先制点を許してしまう。何とか前半終了間際に追いつき、ドローのままハーフタイム。ハーフタイムでは再度戦い方を確認。ポゼッションは6:4から7:3で上回りだし、攻勢をかけようとした後半15分過ぎ、カウンターで失点を喫す。こういうところにまだまだ甘さが見られ弱いチームの典型である。やはり2部に甘んじるチームの弱さだ。
バレーボール日本代表女子の試合をTVでよく見かけるが、なぜ全日本女子がベスト6以上いけないのか・・・?もちろんスキル・体格・戦術など課題はあろうがいつも気になるのが、ナイススパイクを決めた後のサーブである。かなりの確立でミスをしている。ただ相手に拾われたではない。サーブミスをするのである。ネットに掛けたり、ラインアウトをしたりするのである。せっかく得点をしても1本のサーブミスで1得点が1失点になり、結果同じことになってしまう。加えてゲームの流れという側面から見ても精神的ダメージの残る“ミス”になってしまう。考えてみよう、「さあ、いくぞ!!」というときにガックリである。「せめてコートに入れておけよ!」という話である。こういう現実が起こったらプロの世界では簡単である。ミスを重ねる選手は試合の機会を失う・・・ただそれだけである。日本女子バレー界は人材がいるのかいないのかわからないが、叱咤激励しながら監督は使い続ける・・・復活するのを信じて。
まあそれもスポーツの良いところであるのだ。
バランス感覚
春の我々のチームも同じ状況だった。プレー面で失敗してもその選手自身の経験になったり今後のチームつくりに影響を及ぼしてくれるだろうと思えばこそ、その選手を試合に使うのであって誰でも何でも試合に使うわけではない。そこにはそれ相当にその選手が努力をしたという“跡”が見えたり、実際に試合で“結果”を残していったりしていればの話である。それでやっと“試合に出る”というチャンスを掴んだというのであってそこから先はまた別問題である。結果を残すことが大切であり、残らないにしても期待を抱かせるパフォーマンスは見せたとか“結果”や“期待”は無いが間接的にチームに好影響を与えてくれた・・・などという部分がポイントになり次節のメンバー選考の土台となっていくのである。いくら良いスパイクを決めてもダメージの大きいサーブミスをしていては問題外である。一回ならまだしも何回もとなれば“いわんやサーブミスおや”である。
我々のチームでは試合に使って欲しいと“努力”を見せる選手がいる以上、試合出場組の試合時におけるミスに対してはシビアに行きたい。時節のチャンスは無し・・・と考えたい。ただ、今節に試合に出場できなかった選手のほうに努力・好影響・ポジティブといったレディネス要素があるというのが前提である。
ミスした選手を使い続けてプレーを修正し努力は報われると精神論を問いていくのも大切、しかしその一方で「努力しているのにちっとも報われない。」という選手が増えていくとするなら、良くないチーム運営の状態といえる。指導者はそこの当たりのバランスを良く見て、よく自分で感じ、良き反応を示す・・・ことがチームを動かす必須条件である。こういった意味では指導者は最大公約数を割り出す能力、バランス感覚に秀でていなければならない。
人間力
ゲームに戻ろう。もう1つ大きな話題が残されている。
1-2にされた後、後半もすでにロスタイム。そこで奇跡的にCKからの同点弾。延長へと持ち込んだ。春季リーグでは非常に粘り強いゲームを展開することが出来ていた。0-2を後半で3-2にした大阪教育大学(前季は1部在籍)戦、0-0で終わりそうな試合をPKで1-0勝利した神戸国際大学戦、一人少なく押されながらも0-0で逃げ切った大阪商業大学戦等々。
同点に追いついた我々が俄然活気付くのはおおよそ想像が付くところ。イケイケの勢いで攻めるも跡一歩ゴールに届かない。そして勝負はPK戦へと持ち越された。延長戦終了の笛が鳴ると選手達はベンチ前に戻ってきた。私は誰にPKを蹴らそうかと選手の様子をじっと見ていた・・・一人ひとりの顔を見ながら。下を向くもの、気合の声を(ある種奇声ともいえる)あげて戻ってくるもの・・・様々である。4回生には蹴らせたい、4回生に1部の経験をさせるには・・・とあれこれ考えて順番を決めた。そして伝えようとしたとき「あー 足がもうアカン!」といったようなネガティブな発言が耳に入った。私は今この瞬間・このときがいかに大事な場面であることかは重々承知していた。勝つか負けるか本当に大きな局面が目の前にありあることは百も承知。誰もが「キッカーがミスをしないように縁起でもない事は言わないように・・・」と気を使うような場面であることも理解していた。しかしここは今後のチームつくりにおける悪い凡例になってはいけないと、選手全員に試合の状況をそっちのけで、そのセリフに関することを叱った。人間そんなに強くない。時には弱気が出るだろう。しかし時には人のために自分を奮い立たせ演技をしてでも力を貸すときがある。反対に借りるときもある。窮地に陥ったときこそ“人間力”が出るのだと。その私の考えには全くもって逆の行動であったのである。PKの緊張した場面を目前にまさか監督から精神論のお説教が出るとは・・・。選手が萎縮したのか考え込んだのかはたまたやる気を無くしたのか結果2-4で敗れた。悔しく、後悔もしかけたが、結果私は説教したことを後悔していない。もっと大切なことを伝えられた気がするから。
しかし何が許せないかといえば、そのとき私が選んだ選手は結局蹴らなかった・・・。5番手がはずしたら負けるという場面で1回生が出てきた。はずして負け、それを許す上級生にも腹が立つ。このコラムを我が部員が見たとしたなら、ポジティブになれといいたい。これを見てぶつくさ言うのなら、単なるわがままサッカープレーヤーでしかない。
トレーニングのリアリティ
今回話をしたい本当のことは、誰がPKをはずしたとか入れたとかではない。サッカーに限ったことではないだろうが、窮地に立たされたときや決断を迫られたとき、あるいは逆境に出くわしたときに、人は本当の自分の姿が現れるということ。そしてそれらを克服し真の強い人間になるためにはそういった場面に出くわさなければ克服のトレーニングが出来ないということである。雨の日のサッカーは卓上では出来ない。雨が降ったピッチの上でしかトレーニングできないのと同じである。言い換えれば指導者も選手も並大抵のトレーニングでは克服できないということにもなる。そのリアリティを再現できたときに初めてそういった状況トレーニングができるのであるから・・・。
追い込むトレーニング・・・絶対必要である。警察官採用時の面接は通称“圧迫面接”といわれ面接官が受験者を怒鳴り迫り、大きな声で脅かしびびらせるのである。そのときにシドロモドロになったり、たじろいでしまったらその時点で不合格になるとさえ言われている。日本の平和と安全を守るためには六法も大切だが、勇気とハートが必要なのである。その公務員警察官試験に合格させるためには、リアリティのある面接トレーニングが必要なのである。我が大学ではそういった模擬面接のスペシャリストがいる。
面接試験に関しては行えることがサッカーの場面ではトレーニングできない・・・悔しい話である。
そしてもう1つ大切なこと、それは意図してなのかしなくて偶然なのかは定かではないが、幸いなことにそういったリアルな経験をした選手は当然強くなっていなければならないし、他の未経験の選手を育て上げていくべく経験談・経験地を共有していかなくてはならない。そしてそれがクラブの伝統になりクラブのIDENTITY(固有性・独自性)になるのである。悔しい対戦、上位進出に王手を掛けた時代から飛躍の時代・・・これから様々な歴史が今後刻まれていくのである。それらすべてがクラブの伝統になっていかなければならないのである。
次回はリーグを終えた後のころに感じたお話を・・・。
ちなみに・・・ 姫路獨協大学サッカー部のホームページを開設。まだ私が1人で書き込んでいる状態なので工事中のページが多いのだがよければ覗いていただけたらと思います。