サッカーとハート :久々に言いたい事2004-10-05

私は天才肌なのか・・・、なかなか原稿が進まない。書き出したら2時間とかからないのに気が乗らないとなかなかキーボードに向かうことがない。前回の24号から2ヶ月近くも経つ。「何が月2回だ!!」といわれることもしばしば・・・。ほんとうになかなか書けないものだ。

ここ数週間振り返り

前回コラムからこの約2ヶ月、どんなことがあったか少しかいつまんで振り返ると、8月22日〜27日まで大学のサッカー部夏合宿で大分県に滞在。これには神戸のサッカーのコラムでもおなじみの河村優君を特別コーチとして招き、彼と一週間一緒できた行事だった。イタリアへ旅立って以来だったので、とても久しぶりでいろいろな話を聞かせてもらった。とても楽しく有意義な合宿で、しかも今現在行われている関西学生秋季リーグ戦にそれなりに効果が出ているように感じている。

その大分から帰ってきてからは28,29日と連戦で練習試合をこなし、30日からは大学の授業の一環でマリンスポーツ実習のために徳島の阿南海洋センターまで行ってきた。これはサッカーに縁の無い一般学生を相手に9月3日まで行われたもので、私はカヌーコースというのを受け持った。10人ほどのグループで2人一組になってカヌー(二人乗りボートみたいなもの)に乗り、無人島探検や野外炊事を通して自然を振り返り、現在の自分の生活環境や生活の便利さを感じとり、今後の学生生活に何かしらプラスになる人間性向上を狙いとしたものである。期間中少し悪天候の日があり、ボートが転覆した二人組がいて、私が自分のボートから海に入り、泳いで助ける一幕もあった。その二人は高校時代にサッカーをしていた学生でなかなか面白い学生だったが、サッカーばかりしていたのかな?少し他のスポーツの経験が無かったのかもしれない。学生を助けるなんて体育の教員らしい・・・?でも誰でも助けることが出来たシュチエーションだったな・・・。

9月4,5日と練習試合をこなした後、12日からの学生リーグを迎えた。合間を縫ってアジュール兵庫の指導、全国大会の予選(ちなみにアジュール兵庫も5年連続5度目の全国大会出場を決めた。神戸のサッカーニュース・トピックスを参照)、大学の後期授業の準備などをしていった。今回の秋季学生リーグは上位ランク(春季リーグの成績によりランク付けをされる。1位は1部からの降格チーム、10位は3部からの昇格チームといったように)からの対戦になっており、なかなか気が抜けないため少しこのコラムへの集中が後回しになってしまったのかもしれない・・・。緒戦の12日はランク3位の天理大学。初戦のためか1回生がカチコチ。しかも先発の9名が1回生と言うわがチーム。3、4回生ばかりの天理大に前半はやられっぱなしとなり、0-2で後半に突入。しかし後半は7割近くポゼッションして1点返すものの、2点目が取れず痛い開幕敗戦となった。続いて2位ランク、1位ランクと対戦する組み合わせの状態での敗戦は、チームに暗い空気が漂うはずであった。しかしである、選手たちはむしろ開幕の緊張が取れたことと、後半追い詰めることが出来たと言う自信からか、2戦目の関西外国語大学(この大学も強化をしていて3、4回生中心で、しかも滝川第2高校や弘陵高校、広島皆実、奈良育英など名門高校出身選手ばかり)に1-1の引き分け、3戦目はなんと春季リーグ1部にいた甲南大学に3-2で勝ったのである。といってもまあここからが大変で、リーグ戦というものは下位チームに如何に取りこぼさず、上位を食って上昇していくかである。強いチームには気が張って戦うが、少しランクが下になると気を緩めてしまうことが往々にしてある。と言うことはこの開幕からの3試合で上げた勝ち点4(マックスで9点のうち4点を獲得)を、生かすも殺すも今後である。甲南大学に勝っても、下位に負けていたらせっかく取った勝ち点3がふいになってしまう。ぜひこれからの奮起にも期待したい。

さて今回の本題。

ワールドユースサッカー選手権アジア予選のすさまじさ

現在、ワールド・ユース・サッカー選手権アジア予選が行われているが、日本代表はカタールと壮絶な試合を繰り広げ、6大会連続の世界の切符を手にした。最近の日本サッカー界の様子しか知らない人は「負けるわけは無いだろう」とか「まだベスト8の戦いやで、4強ぐらい行かな」とかいう意見も聞こえそうだが、ほんの10年前は中東のチームには勝てるどころか引き分けに持ち込むことさえままならず、若年層では世界に出て行くなんて「できればいっか・・・」くらいな感じさえあった。当時の代表スタッフの方々には申し訳ないが、これは現在の周りの環境やメディアの状況、ファンの定着、協会の姿勢などどれをとっても過去とは雲泥の差があるのだから仕方の無い部分なのかもしれない。だから当時を非難するつもりもないし必要も無い。それが歴史なのだから。まあ、逆に言えば現在のサッカー界は、なるべくしてこういう結果を導き出しているのだから当たり前といえば当たり前である。

苔口卓也との縁

その日本ユース代表にレギュラーとして先発出場をして1、2戦とゴールを決めた“苔口卓也”と言う選手をご存知だろうか?現在はセレッソ大阪所属であるが、小・中・高校時代は岡山県で育った選手である。実はこの選手と少しばかり縁があるのである。彼が小学校6年生のとき、陸上の全国大会で100Mで3位か何かの優秀な成績を収めたことがある。岡山の知人にそういう情報を聞き、ヴィッセルとしてアプローチをした事がある。

当時の彼は、サッカーといっても小学校の小体連レベルで、不規則な間隔での練習しかしておらず誰の目にも留まることは無かった。地元の中学に進学と同時に、ヴィッセルとしては彼をいずれは獲得したいと言う前提で、よりよいトレーニングを施し中学校の先生・保護者と協力して育成しようと、私と当時の統括部長は考えたのである。中1の春休み・夏休み・冬休み、中2の春休み・夏休み・冬休み、中3の春休み・夏休みと長期の休みのたびに岡山駅から新神戸駅まで指定の新幹線に乗せ、新神戸の改札で合流し、各遠征先に帯同させた。第2土曜日・日曜日も学校行事が許す限り神戸まで呼び、練習に合流させた。もちろん神戸が全額交通費は出した。やがて高校進学になったとき、私は彼の実家に3回、中学校にもさあ、合計何回足を運んだろうか?勧誘に行ったのである、“ユースに入ってほしい”と・・・。

ヴィッセルの損失は統括部長の責任

彼が中3のときに当時の強化部長が8月に解任され、新しいチーム統括部長が赴任してきた。互いに引継ぎは無かったのだろう、前任の部長は何かとバックアップしてくれ、「寮は造れないにしても、下宿先や食事環境を整えてやれ」といってくれたが、新しい統括部長は全く下部組織に興味なし。しかもそれどころかヴィッセルのジュニアユース、ユースが小野浜にナイター照明車(荷台にアーム式の伸展式照明、ハロゲン球が6個ついたもので、高さは10Mの高さから照らせるもの)4台を搬入して練習を行っていたことにさえ「金を溝に捨てるようなものだな、育成の照明代は・・・」とまで言い放ったのである・・・その統括部長は。

結局、苔口君は中学3年生に進学する前の春休みに行われたナショナルトレセンに、中国地域トレセン選手として参加し、全国で注目されだしたのである。その後もヴィッセルとしては彼への活動を継続して行き、前述の実家への足運びとなったわけである。しかし、ご両親は本人に任せるといってくださったのだが、彼本人は神戸での生活に不安が有り、結局地元の玉野光南高校に入学をしたのであった。

今後のヴィッセルは・・・

その辺にある高等学校よりグラウンドの便が悪い。クラブチームは学校から帰ってきてから改めてグラウンドに出かけなくてはならないというハンディを背負っている。これを解消するに値するくらいのグラウンド環境が無ければプロではない。その辺の高等学校のほうがよっぽどプロである。また高校のほうが寮を持っていて、プロが寮を持っていないことが大半である。全く話にならない。プロと言う看板ははずしたほうが良い。あるいは育成に関しては断念したほうが良い。私がヴィッセルをやめさせられたからいっているわけではない。世間一般的にどう考えても、Jリーグとはサッカー界においては一番で無ければならない。最高のものを持っていなければならない。ハードもソフトも・・・。今まではお金が無くて出来なかった?良かったじゃない、民事再生法でスポンサーが楽天に変わって・・・。今後三浦統括部長の育成への考えが現実のものとして世に出てくることだろう。期待しよう。

「えらそうに言うな」とか「お前がヴィッセルにいるときはそんなこと言わなかったぞ」と思われるかもしれないが、あたりまえのことである。どこの世界に自分の会社のことを世間様に愚痴ったりしゃべったりすることがあろうか・・・?決して自分の会社の情けない部分などは、口が裂けても言わないものである、たとえ本当に情けないと思っていても・・・。しかし中には、いるのである平気で自分の会社のことを言う人が・・・。

それでもっと驚くのが、ヴィッセルは特殊な職種で様々な雇用形態が存在しているのだが、決まって“出向社員”が他人事のように言っていることである。契約で一年一年を勝負している人の立場を考えて発言をしてもらいたいものである。ましてや、本当に今の仕事がいやなら辞めたら良いのである。辞めたくないのなら言わないほうが良い。そういうことは内部で解決してくれ。出来ないのならサッカー協会、地元のファンをもっと巻き込んでいけという話だ。

そういった社員の統率が取れないようでは、これからのヴィッセルも今までと変わらず、それぞれ各個人がそれぞれの仕事を淡々とこなすだけであろう。それでもチームは存続はしていけるであろう。しかし、社長以下アットホームな社内の雰囲気、ファンがついつい寄りたくなるような、人を引き込むような空気はいつまでも奏でられないだろう。

ハードとソフト、そしてハーモニーである。

私は三浦統括部長を応援している。彼はトップから育成、サッカー文化を根付かせようとしているし、よく事情を理解している。がんばってほしい。