サッカーとハート :WMについて2004-08-22
少年サッカー選手にサッカーを学ばせるのにはWMシステムがよいという。ではどこがどうよいのだろうか?今回はWMシステムについてかんがえてみる
サッカーの流れは?
現在、世界のサッカーの流れはどのようになっているのか?この問題の答えはありそうでない。いや、なさそうであるのか・・・?その年その時に世界大会規模、あるいは大陸規模での大きな大会、つまりワールドカップやヨーロッパ、アジアなどの大陸ごとの選手権でそのトレンドを測り知ることができる。
いまはレススペース、レスタイムのコンパクトなサッカーからそれらを打ち破る個の時代に入ってきているように感じる。まだまだ組織だったシステマチックなサッカーが多く、“連動”だの“コンビネーション”という用語は死んではいない。むしろ輪をかけて緻密になっているのかもしれない。
しかしながら、それ故に個の重要性がクローズアップされ重要視されていると思われる。組織立ったディフェンスもオフェンスも結局は個の集合体なのであるから・・・。
言い換えれば、ひと昔前のマラドーナやプラティニといった、局面を一人で変えられる技量の必要性、タレント性を時代は必要としているのではないかと思う。
では、そういった個を育てるということはまず初めに何が必要かというと、基本の習得である。“基本とは何か?”ということこれがまた難しいものである。人それぞれ認識が違い、共通のイメージを持ちにくい。しかしながら相手に取られないボール捌き、相手選手を察知し見る力(察知し見て状況にあわせてボールを捌くプレー)など個人で必要とする能力とフォーメーションを通して学ぶカバーリング、パスワーク、ゴール前へのつめ方、ゴール前の守り方などは、ほとんどの人が共通した絵を描けるのではないだろうか。ならばこういった“共通した基本”を習得する必要が生まれるわけであるし、習得する方法が必要になってくる。そしてこれらはグラウンドの上でレクチャーされる事が大切になってくる。
これらを網羅するのは“ゲーム”である。トレーニングも必要だが結局ゲームの中から分析されトレーニングされ、最終的にはゲームに戻っていかなければならない。ならば、ゲームにおいて、より効果的であり効率的なものはないだろうか?言い換えればそのゲームをすることで否応なしに学んでしまう何かスパイスがあれば良いのだが・・・。
個の答えを求めたら私の中には“WMシステム”という答えになるのである。
WMフォーメーションには基本が満載
1870年代の初めにイングランドの2-3-5(ピラミッドシステム)システムが流行し成果を収めオフサイドトラップも流行した。3人のうち1人が上がればオフサイドが成立した時代であり、失敗しても残りの二人がカバーに入ればよいという戦術だった
1925年にメディアやファンの要望でオフサイドルールが変更になり、2人制オフサイドとなったと同時に得点ラッシュの時代へと入って行った。その時アーセナルのハーバード・チャップマンがWMシステム考案したというのは前回お話したと思う。
WMシステムは左図のような配置を指して言うのだが、FWとIN(インナー)を結ぶとWの字になりMFとDFを結ぶとMの字になるところからついた呼び名である。
では、WMシステムの何が良いかというと、その下の図2を見ていただきたい。もしあなたが図2のような右サイドライン際をドリブルで駆け上がって「さあ、ゴール前にセンターリングだ!」と言う役割を担った時に、味方選手にどこのあたりに入り込んでほしいですか?言い換えるならあなたが指導者ならどこへ入り込むように指示を出しますか?ということです。
一つはニアサイド、もう一つはマイナス、それとGKの裏、そしてファーサイドと答えなければならない!答えられたかな?この答えが出ないとまずは話が進まない。指導者になるならこのことは常識として知っておかなければならないし、その常識をレクチャーしなければならない。そのためにこのWMシステムを使うのである。それらのゴール前に入り込むべきポジションを結んでみよう。(図3)
すると興味深いことがわかる。結んだ線は“W”の字になっているのである。つまり点を取るためによく「ゴール前に詰めろ!」と言うが誰がどこに入り込むのか?また役割通りに入り込めなくても入らなければならないスペースがどこなのかを教え、徹底させることができるのがこの“WM”なのである。
ほかには2人ディフェンシブハーフの左右スペースカバーリングと前後スペースカバーリング、3バックの左右スペースカバーリングと前後スペースカバーリングを理解させるのにも良い。(図4)
ディフェンスもハーフもボールとマーク相手が両方見える位置まで戻り、ゴールサイドからマークしなければならないと言うことを忠実に実行させるにはもってこいなのだ。スイーパーと言うカバーリング専門の選手を配置しないことでディフェンスプレーヤーに負荷を与えるのである。「しっかりポジションをキープしないと背後を取られ失点するよ。」と。
(1) 黄色ライン(ハーフバックのノーマルポジション)が相手の攻撃具合によって(2)の
黄色ラインのように下がりながらなおかつ斜めになってカバーのできる位置を取ると言う基本である。あぶないスペースを埋めるために戻ってくる・・・そのためにはステップワークも必要である。戻ってくるのも周りを見ながら・・・周りを見る力・・・が必要であるということが自然と身につくのである。すなわち指導の現場では「こうしなさい!」と言って理解させるのではなく“自然にプレーしてしまう”という環境を作り上げてこそ“自由にプレーをしなさい”“自由だよ!”と選手に言う意義があるのである。ディフェンス、ハーフバック(今で言うミッドフィルダー)、インナー、フォワードのそれぞれのポジションごとの基本があって、そしてサッカーの基本を学ぶのである。
今流行のドイスボランチ、フラット3バック(3バック)、トップ下といわれるポジション。これらの役割は基本のポジショニングを理解すればこなせるのである。すなわちみなが俗に言う“基本”だったのである。