サッカーとハート

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no.45
2007.7.10 tue.
by c.shoji


提示力・止める勇気

現在、自分でサッカーチームを立ち上げ、有給の指導者として生活を送っている30歳前後の若手指導者が大変増えてきた。それはそれは大変な勇気とエネルギーだ。子供が集まらなければ死活問題だからだ。そうおいそれとスポンサーが有る訳でもなく自分達の動いた“量”と“質”が生活を支えるのだ。そういう彼らが立派な指導者になって自チームのみならずサッカー界を引っ張って行ってくれたらありがたい。

今、このたくさんあるサッカーチームから消費者(選手・・・親と子供)はチームチョイスをする時、何を持って選ぶのか?環境?近いから?強いから?指導者が良いから?そう、色々理由はある。

指導者とは何?なぜにこうもたくさんの人がサッカーの指導をするのか?

◇ プラン ◇

サッカーの指導者にはくつかの仕事がある。それぞれの目標を達成するためにそれぞれのタスクがある。では指導者の究極の役割とは何だろうか?どういうタイプの指導者が良い指導者なのか?選手に何をしてあげることが一番必要なことなのか?次の例を皆さんはどう思う?

新神戸駅から新幹線に飛び乗った。目標は新横浜駅。たまたまホームに新幹線が来たので飛び乗った。おそらく方向としたら東京方面に向かっているので間違いなく東京方面には行くだろう。しかし途中どの駅で止まるのか?この電車はひかりなのかのぞみなのか?そしていったい何時に付くのか・・・・?ひょっとしたら新大阪止まり?飛び乗った列車の終点が自分の行きたい駅ならば寝ていても目標駅には着く。しかし目標駅が終点ではないとすればどうする?ましてやその情報は無いとなれば・・・。寝過ごす可能性もあるのだ。

こういった先が見えない状態の時、“人”は不安になる。しかし自分が乗った新幹線がどこ行きであるとか途中どこで止まるだとか何時着といった現実の情報が事前に判っていたらどうだろう?『○○時まで寝よう』とか『食事を取る時間がある』などといった計画をたてて車内で行動することが出来る。計画は先が見えているからこそ立てられるものである。

ましてや“大人”は経験的に新神戸から新横浜までは3時間ほどある・・・とか『10分前に降りる用意をすれば間に合う』といったことを知っている。つまりドキドキして寝ずに緊張して到着駅を待たなくて済むのである。

では子供はどうだろう?初めてのお使い・・・ではないがまず不安で落ち着かないだろう。

◇ 提示力 ◇

そう考えると指導者の仕事とは・・・・何か見えて来はしないだろうか?

『出口の無いトンネル』、『行く先が見えない闇』といった類のものは人を不安にさせる。ということは“行く先”、“目標物”、“方向”、“時間”といったものが分かっているということは逆に言えばこの上なく人を安心させる要素ということが出来る。指導者はこの“行く先””方向”といった選手として目指すべき物、方向、目標、選手像を提示することが大切ではないかと考えている。

それらの情報をいつ?どういった言葉で?理解させるかが次なる問題ではあるが一筋の明かりを照らすことが指導者における最大の仕事ではないだろうか?その一筋の光に相当するものはプレーの評価、技術の評価、チームの目標、選手個人の目標といった数字で表しにくいものであったりする。しかし表現しなければならない。対象が子供であればあるほどこの一筋の光はどんどん太い光にしてやらねばならない。

選手側に立てば指導者の『提示』すると言う作業は的確であり分かりやすい言葉ほど良い。最もそういった数字であらわしにくいものを如何に理解しやすく現すか・・・しかも相手が聞き入れやすくなるような話し方や会話の“間”を使い分けながら・・・となると指導者の人間性・キャラクター・センスなのかもしれないが・・・。

◇ アンテナ ◇

若手の指導者が増えてきたことはとても良いことである。指導者に必要な要素は良き兄であり、良き父であり、良きコーチであり、良き教師であり、良き企画者であり、良きセールスマンであり・・・そして前述の『提示力』と様々な要素が必要である。教師も大変な仕事であるがサッカーコーチも大変な仕事である。この大変な要素を出来るだけ早く会得する必要がある。なぜならプロだから。それが商売ネタだから。ひとにない”売り“を持っていないと近所の食堂に客を取られた美味くない飯屋と同じだ。

何時まで経っても日々勉強、何年経っても勉強が必要ということは日々体感する。実際自分の知らないことに良く出会う。だから勉強や指導者としての完成や終わりは無いだろう。それでも出来れば人より少しでも多くのことを、人より少しでも速く知る方が良い。物理的なことは致し方ない。例えば親になってみないと子育ての大変さは分からないとか子供を持って始めて知ること(親の恩、反抗期の大変さ・・・等)などは時間と共に学ぶこと。ただそれ以外のものにはアンテナを張って日々敏感になっていなければならない。

◇ 若手指導者にエール! ◇

私は現在、兵庫県クラブユースサッカー連盟の理事長をしているのだがこの組織の仕事は何かというと中学校・高校年代における学校の部活以外の、いわゆる“クラブチーム”における円滑な競技会参加・運営、新規設立チームの円滑な登録サポートである。今現在、中学校年代のクラブにおいて私が前述したことをしっかり自覚して指導をしているクラブがいくつあるか?きちんと一筋の光を差し込んだ指導をしているクラブとそうでないクラブとの差が徐々に見え始めているような気がしている。やがて各地域でクラブの存続危機や自然淘汰といった事態が起こる時代が来るだろう。サッカーも自由競争の時代に入ってきたのかもしれない。『選手の取り合いになるので我々のチームが練習をしている周りではチームを立ち上げないで欲しい』といったことを誰が止められるのか?つぶれていくガソリンスタンド、すしチェーン店の横に乱立するスパゲティ屋や焼き鳥屋。軒並びに建つラーメン店の多いこと。焼肉屋しかり・・・価格破壊を助長するこのご時勢にサッカークラブも同じようなことが起こりつつある。

こうなるとクラブの売りは?クラブのセールスポイントは?クラブの食いネタは?ということになる。・・・結局究極は人と人・・・つまりは指導者の質・・・・これしかない。面白いことを言うだけの“お兄ちゃん”的要素でのみ子供に気に入られているようではお先は見えたようなもの。あえて苦言を言うが質向上は必須条件であることは間違いない。

言い忘れたがサッカーの知識と指導の施し方(実践)も絶対条件であることはいうまでも無い、なにせプロ(有給指導者を抱える)サッカークラブであるから。

◇ クラブをチョイス ◇

これから子供をどこかのサッカークラブへ預けようと思っているご両親、何を持って入会するクラブを決断する?練習所が家から近いから?それも大切な要素。しかしできれば体験入部をした上でそのクラブの指導者と話をして決めたほうが良い。そしてそのクラブへ入る勇気と入らない勇気を持って欲しい。自分の目で見極める眼力を持って欲しい。現在は指導者が選手を選ぶのではなく選手が指導者・クラブを選ぶ時代なのである。指導者の質を見極める目が肥えていくことが指導者を育てるのだ。

しかし注意して欲しいこともある。保護者が言いたいことを言いたいだけ、好き勝手に”忠告“という名で所属クラブ指導者に言うという行為はいただけない。最近保護者のエスカレートも気になる。サッカー経験者のお父さんやスポーツ経験のあるお母さんが増え、自分の価値観で物を言うことが多い気がする。まあそうは言ってもそういう行為を保護者にさせてしまうこと自体、指導者の質が問われるということであり・・・、つまりその部分において自然淘汰されていかないとサッカー界全体やチームの運営スキルが向上していかないと私は考えている。

だからこそ、そんな時代だからこそ保護者は指導者と建設的に話しを行い、所属クラブの指導方針をよく理解して、わが子の子育ての方法にサッカーを利用していくことを視野に入れて欲しい。だからクラブを選ぶ時代なのである。だからクラブは様々な指導方針をもって自分達の”売り“を持つ必要がある。親からすればクラブの指導方針が自分の子育て教育論と合わなければ合うクラブを探したいものだ。そう言う環境になっていかなければ本当のサッカー文化の向上は無いだろう。しかし現実には『すぐ別のクラブを・・・』というわけには行かない。なにせ自分の居住地近くにそういった多種多様な”売り“を持ったクラブが沢山存在することは無い。少々遠方まで行かないとクラブがない。理想的なことばかりを言うようだが将来のよい姿としてはこういったことをイメージする。選手の質を上げる指導上のことばかりでなくこういったサッカーを取り巻く環境を向上させないとJFAが言う『世界のトップ10』『ワールドカップ優勝』などは実現しない・・・と思っている私である。

◇ マイ・ブーム ◇

今私の中でのマイブームの言葉は『止める勇気』である。これが今後の私の“売り”ネタかもしれない。サッカー協会の行事がそう。長年続いているから今更辞められない・・・といって続けるのではなく、本当に必要且つ効果的なものを残し、そうでないものは止めていく勇気が必要である。それが選手のためならばなおさら・・・。今、兵庫県・神戸市サッカー界は新しいアイディアを出し、改革を施す時期が来ていると私は考えている。指導者の変革・行事の変革・保護者の変革が必要な時代である。2007年4月から就任した兵庫県サッカー協会技術委員長という役職やJFAユースダイレクター(兵庫県の2〜4種・女子の競技会の整備や育成年代の指導者育成のリーダーとしてJFが任命する役職、ナショナルコーチの兵庫県版といった仕事)という仕事がまさのその“やめる勇気を実践”する仕事だ。

私が指導しているチームの“指導方針”を見て考えた・・・。私自身も改革をしていかないといけない。止める勇気・・・辞める勇気??この8月末から私はS級ライセンス講習会を受講することが決まり9〜2月くらいまではほとんど勉強漬け。週末しかチームの指導が出来ない。これって改革のチャンス?


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