カルチョの旅

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2003.7.31 NO.6


「理想と現実のギャップ…?!」

Ciao! 

今日は、海外で夢を追う外国人(日本人)について考えてみたいと思います。

私は、ここイタリアで監督を目指しています。でもその夢を追いかけていると、一外
国人として様々な障害にぶつかるのです。

監督をするには、まずその国のライセンスが必要となりますね。それを取得するため
には、当たり前ですが語学習得が絶対必要条件となります。第一の壁です。
実技講習では、選手役を演じている他の講習者に適切な言葉を投げかけることが要求
されます。
彼らが投げかけてくるあらゆる難問に、納得いく答えを出さねばなりません。(口答
試験も同様で、インストラクターはさらなる難敵!笑)
筆記試験においては、すべてイタリア語で出題されるため、読解力と記述力が要求さ
れるのは当然です。

そして第二の壁。このライセンスを取得にあたっては、外国人枠というものが存在し
ます。ですから、その狭い枠を目指して諸外国の実力者と競争をしなければなりませ
ん・・・。
では、このライセンスを獲得したとしましょう…。(実際に取得するには凄まじい困
難を極めますが)
障壁はここで終わらないのです。

サッカークラブも会社です。この会社が、人を一人雇用する際の負担は相当なもので
す。
給料を与えるだけでなく、社会保障を含め、多額な税金を国から要求されるからで
す。ですからイタリアでは、人を正規に雇うことに関しては非常に慎重なんです。
このような国で、外国人の私と、あるイタリア人がほぼ同じ能力だった場合、雇用す
る側としては、どちらを選択するでしょう…?! ※この場合コミュニケーションは
しっかり取れることが大前提にあります。

答えは明白ですね。確実にイタリア人を選択するでしょう…。
それでは、私がイタリアで監督になるためにはどうするか?!
ライバル以上の能力を発揮するか?
(リッピやカッペロ、コズミを超える能力、そして縁故が必要…いわゆるコネという
もので実力以外にかなり必要とされるかもしれません、笑!!!)
日本人という特性を生かし、中田や中村みたいな選手を発掘してイタリアへ連れて来
て良い成績を収めるか?!(笑)。(海外では監督とその中心選手がセットで移籍する
のは良くあるケースですが…)
あるいは日本のチームで素晴らしい成績を収めて海外からオファーが来るぐらいの監
督になるか?!
(しかし日本で活躍できたとしても、ここイタリアでは国外のNEWS『カルチョに限っ
て』は全くと言っていいほど放送されないのでW杯並みのビッグイベントでの活躍が
必要ですね…)

以上のいずれかが、私がこのイタリアで外国人として監督になるために可能性として
挙げられることです。

厳しい…

それではプレイヤーはどうでしょう? 日本人がイタリアで活躍するためには??
現在FIFAの規約を基に、イタリアサッカー協会が定めているルールがあります。
※ここではあまり専門的に述べません。私が知っている範囲で述べます。
日本人にとって、このルールの中で最大の関心は外国人枠です。
この外国人枠、現在セリエAでは、各チームでEU圏外の選手を新規に1名登録させるこ
とができることになっています。(新しく1名チームに登録したら、1名を放出しなけ
ればならない)
…なんと1名です!1名!
移籍市場にウジャウジャいる、アルゼンチンやブラジルのプレイヤーとその枠を争わ
なければならないんです!
そしてセリエB、Cになると、0名です!!!
(これはイタリア人の若手を育成する目的が背景にあります)
そして最後にセリエD(イタリアではディレッタンテ(アマチュア)と呼ばれていま
す)。
こちらではチームへの登録は可能ですが、EU圏外選手の試合出場は1名のみとなって
います。この規則は、チーム全体、下部組織も含めての話です。
また、18歳未満となると青田刈り防止、人々売買防止の意味合いから基本的には連盟
(チーム)への登録ができません。(両親がその国に滞在しなおかつ職業に就いてい
るなら別ですが)

そうなると、イタリアの各クラブは、日本人獲得にあたって何を求めるのでしょうか
?!

「イタリア人を凌駕する能力の発揮によって、チームの中心プレイヤーとなりえるか
どうか?」
「各クラブにもたらす経済効果としての商品価値があるかどうか?」
月並みですが、この2点だと私は考えます。

今や海外で日本人が活躍するのは、珍しいことではなくなってきました。中田や中
村、そして今年は柳沢がイタリアのクラブに所属しています。日本では様々なメディ
アを通して情報が伝わっていることでしょう。
彼らは素晴らしい夢を少年たちに与えていると思います。同じ日本人として私も誇り
に思います。

しかし一見華やかな選手生活を送っているように見え、憧れの対象となっている彼ら
ですが、それは類稀な能力と努力による、「日本での実績」があってこそ成せた業で
す。
日本から、一人の若者が彼らを目指して海外へ飛び出してくるなら、その時点で既に
イタリア人を凌駕する実力と、商品価値としての魅力を兼ね備えていなければ、まず
登録(契約)は無理でしょう…。

中田らのようなビッグプレイヤーとなれば待遇もそれ相当のものが用意されますが、
海外で一から始めようとする若者にとっては様々な困難が待ち受けています。(試合
に出場できない期間の存在、言葉が通じない、食事が合わない等々)

「海外に飛び出していけばなんとかなる!」
「日本でダメだったから海外で!」

…という具合に、海外に飛び出しさえすれば自分を向上させることができると安易に
考えているようでは、まったく通用しないと思うのです。
かなりの覚悟(×10ぐらい必要※背水の陣という意味!)と、家族の全面協力、そ
して異文化に迎合する適応能力、さらに素晴らしい人との出会い…がなければ、海外
で成長し、プロにはなることは無理でしょう…。
もちろんこれらの条件が満たされたとしても、不可能な場合だってあるわけです。

ヤバイ…、自らにプレッシャーをかけてしまった!!! 自分のことは棚に上げてこの
ような発言…。

これから自分はどんな困難と立ち向かってそれに挑んでいくのか?!
まあ私の場合はコーチを目指しているわけですから、気を長くしてがんばりたいと思
います・・・(苦笑)。

しかし、プレイヤーとなれば話は別です。若い彼らは、日本という文化も充分に認識
しないまま、今だ学歴がものをいう社会を飛び出してくるわけです。
モノが満ち溢れた社会で育ち、苦い経験を知らない。四方を海に守られた国で育った
きた彼らにとって、いきなりその防護壁が取り除かれるわけです…。

決して海外からプロを目指す夢を全面否定するわけではないのですが、もし私が指導
者として日本にいるなら、夢を壊さないためにもこう若者たちへ告げるでしょう…

「日本という素晴らしい環境があることを忘れないで」

みなさんはどうようにお考えでしょうか?!

それでは、Ciao.

Kawa


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