カルチョの旅

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2006.2.1 NO.39


「守護神!」

 Ciao!
先日は「ストライカー」について技術的な部分から考察しました。
今回は具体的に世界の有数な選手を参考に「続編!」と考えていましたが、「いやポルティエーレ(GK)こそイタリアは宝庫ではないですか?!」という方々へコラムです。

実はこのテーマ語りたかったのですが、何せ専門コーチではないので深く掘り下げられなかったのも事実です、苦笑。
しかしせっかく世界有数のポルティエーレを輩出しているカルチョの国にいるわけですから、一度はテーマにあげておかないといけないでしょう!!!

というわけで今回は「チームの守護神」にスポットを当てたいと思います。

先日あるJチームの関係者から質問メールをいただきました。
そのJチームには一人のGKがよくイタリアへ短期留学し、頻繁に某セリエAのトップチームのトレーニングに参加しているとのことでした。
この観点から私の友人は日々の日本におけるトレーニングで、他のGKたちとの決定的な差を感じたそうです。
質問は下記の通りです。

◇               ◇               ◇

イタリア留学経験のあるうちの○○選手にいくつか聞いてみました。
彼が体験学習した、違いですが…

1) シュートに対するセービングの仕方
日本:点でボールに合わせる。
→その結果、低い速いボールに対して遮断機的セービングになりやすくミス、ゴールが増える。

イタリア:ボールに対して線で合わせる。
→できるだけ速くボールのコースに身体(手、腕)を持っていき、まずゴールへボールが行かないようにする。
これに関しては、この前、河村さんが書いてくれた『斜め前に跳ぶ』や『まず失点しないこと』、『CKに逃げること』などと通ずるものがあるのかなと思います。※私が返信した文章は後で述べさせてもらいます。

2)セービング時の腕の使い方
日本:ボールを触る際に、手が身体に近い。(肘がかなり曲がっていても良い)
→その結果、ボールに触る直前でボールに変化等起こった際に手のコントロールがしにくい。

イタリア:ボールを触る際の手の位置が身体から離れていること。(肘が伸びた状態)
→その結果、手のコントロールがしやすい。

これも本職でない私は、今ひとつピンと来ず。やってみないとわかりません。
またどちらが良くて、どちらが悪いか私には良く分からない。
ただこの違いは、イタリア式でやっている○○選手と他のGKとの違いは明らか!です。この点をこれからよく観察しながら練習を見ていきたいと思います。

◇               ◇               ◇


以前、私は友人からこの質問が届く前に、返信させてもらったことがあります。
別にこれといってイタリアのGKコーチと会ってインタビューをしたわけではなかったので、確信は持てなかったのですが…。

しかし先日、私の友人でこれまたJクラブのGK育成コーチが1週間のバカンスのためイタリアへ遊びに来た際にペルージャのGKトレーニングを視察する機会に出会ったのでその話と少し平行してこの点について改善点を述べていきたいと思います。

1)についてですが、イタリア人のトレーニング風景を眺めていると『斜め前に飛ぶ』以外にも『横の動き』・『斜め後ろへ飛ぶ』セービングもいろんなバリエーションで行っています。
理想は完璧にボールをキャッチングすることはもちろんですが、その理想形を「維持できない場合にどうするか?」という観点から最悪『失点しないこと』も視野に入れられてボールを捕ることよりもゴールを守るということを第一と考え、『CKに逃げるフェスティング』や『危険ではないエリアにシュートをはじく』こともその日によってきめ細かく指導されていることもあります。

最終的にはボールの速度、自分の瞬間移動距離、ポジショニングを一瞬のうちに計算し技術を発揮しないといけないわけですから、経験や試合勘がモノを言うことは間違いないでしょう…。
ですからトレーニングで何万回行ったとしても、そういった場面が訪れないことにはそれを活かせないわけです。
そういった意味でベテランのGKが活躍している、あるいはGKの現役寿命が長いというのは理に適っているのでしょうか。

2) についてです。
利点は腕を伸ばして最大限のリーチを活かすこと、それから上述したことがあります。
さらに申しますと、常に最大限のリーチで最速のボール到達地点を追求しているため肘が曲がっている状態よりも守備範囲が広がる可能性が高くなります。

これが【斜め後ろダイビング】を決断する決定的な理由ではないでしょうか…。
イタリア人のGKは逆手で一番遠いサイドのボールを弾くことに長けている気がします。これはおそらく私が推測するのにこういったボールの到着点を瞬時に計算して『間に合わない!』と判断したらすぐに自分の持っている技術の中で、最速でボールの到達する自分のダイビング範囲を自分で把握しているため、そのシチュエーションに応じたプレイを実行できているのです。

ただ一方で肘が伸びきった状態だと「ボールを吸収して和らげる感覚が持てないためクッション効果をもたらさないことも頭に入れないといけない。」と私の友人がそのペルージャのトレーニングを見ていたときにアドバイスをしてくれたので、この点を改善させながら習慣づけていかないといけないでしょう。

以上が質問の回答になります。

そしてそのペルージャのGKコーチが発言して一番参考になった話がありました。

そのコーチ曰く「フィジカルコンディショニングは個人の特徴に合わせて課題を考えている。」とのことでした…。
具体的に「選手個人の能力において最大限スピードを利用してセービングを行っている選手には強さ(パワー)も補っていき、スピードとパワーを同時にバランスよく使える選手になる必要がある。一方で強さ(パワー)だけでセービングしている選手にはスピードを利用したセービングを課題にして柔軟性も養うべきである」とのことでした。

別に当たり前と言われればそれまでですが、個人の特長を見出すのは機械ではなくコーチです。
もちろん選手個人で自らの問題点に気付く場合も稀にあるでしょうが、正しい課題を提示できるのはコーチです。
そうしたことも理解して専門的な技術指導を考えていかなければいけないことを感じました。

では次に私がヨーロッパB級ライセンス講習会でイタリアGKコーチに学んだ発見について少し述べたいと思います。
これは別に大人だけでなく少年GK育成にも適用できる概念です。

1) トレーニングは常に地面を体に慣れさせることが一番!
→これは常に地面へ転がる、地面へ寝転ぶ形になることを繰り返すのがポイントです。GKの身体の一つ一つの部分と地面が接着することによって地面へ着地する際の怖さを除きとる要素となるからです。

2) 腰ではなく背中の振動を利用したセービングを目指す!
→よくGKで腰痛になっている選手を目にします。これは無理なセービングがそうさせている可能性が高いのです。この場合背中の振動を利用した柔軟性あるセービングが行うと腰痛が起きません。つまり「バタン!」と倒れるのではなく、クッション作用をもたらす地面への落下の仕方が問題となります。

3) 【足4の字】でどんな体勢からでもポジションにつける習慣!
→片足の裏が地面に着いている状態であればすぐに起き上がる体勢にあります。しかし両足の裏が地面に接着していないとセカンドボールに対応する体勢ではありません。足4の字の姿勢を形成すると必ず片足の裏は常に地面へ接着する準備ができています。一度試してください。

4) 問題点の発見と改善する出発点
→GKの技術においてはより専門的であるからこそ発達する段階、問題点も個人によって異なります。各自の能力に合わせて課題を消化して成長を促していくことが必要です。(例えば地面にダイビングすることを恐れているのであれば、座った姿勢から出発するダイビングに切り替えるetc)これについては先ほど【強さ】と【スピード】両方を補うという考え方と同じですが、技術的な部分をここでは強調させてもらいます。

5) シュートに対する理想的なポジションは自分で探す!
→ポジションの理想としてのセオリーはあります。しかし最終的には自分の能力にあったポジションは自分で探さないといけません。つまりスピード感覚、重心移動の速さなど自分の能力に見合ったポジショニングです。例えばチームとしてラインDFを戦術で採用しているのであれば必然的に前に強いポジション取りを考えるべきで、単純に考えてループシュートを打たれた場合などのトレーニングも必要となるかもしれません…。(あくまでも事例です。)

6) いろんな形のボールを同時に利用する。
→テニスボール、3号球、5号球、エリアマーカーなどコーチがGKへ投げるのですが常に形・大きさが変化するためにGKは戸惑います。しかし試合になるといろんな条件へ対応しなければなりません、こういった条件設定がボールの急激な変化に対応するための能力向上となっているかもしれません。…と考えれば「おもしろいな!」と感じました。

以上が自分の中で新しい発見になりました。
写真・絵などがあればわかりやすく伝わるのですが、今回は紹介できないのが大変残念なことです。

最後になぜイタリアにたくさん優秀なGKが存在するのか?!
いろいろと理由があると思います。

1)昔イタリアキャンプにおいて日本人の少年が興味深い発言をしていたことが記憶にあります。

監督「4バックでラインDFなんやからポジションを前に上げんかい!」
少年「でもイタリア人FWはどんな位置からでも、俺がふとポジションを上げるとゴールを狙ってくんねん!」
監督「…」

この話、監督的にはイタリアチームがDFライン裏を常に狙ってくる攻撃(裏へ針のようなパスを突き刺したり、ライナーでDFラインとGKラインの間へピンポイントで合わす攻撃)への対処をGKも11番目のフィールドとして役割を求めたのです。

しかしGKとしてはシュートが飛んでくるわけですからポジショニングも微妙にコントロールすることが求められます。
要は隙あればゴールを狙ってくるストライカーが存在する土壌がGKのレベルアップも相乗効果として挙げられると言えるでしょう。

2)各チームに必ずGKコーチが存在している。
これはプロのチームだけでなくアマチュアのチームにも各カテゴリーにおいて存在します。
いない場合にはトップチームのGKコーチ(プロであれ、アマチュアであれ)が育成年代のカテゴリーで週に1回指導します。
やはりGKは専門的なポジションですからより経験値の高いGK出身の方々が教えていくべきだと思います。

3) 守備を固めてカウンターを狙う民族性があったゆえに…。
イタリアは遠い昔を遡ると体格的には他の欧州の国々と比較したら小柄な方で、歴史的背景からも受身的な立場にありました。
今でこそセリエAというリーグがあり食文化の発達や混血による民族の発展によって見違えるほどの差は感じなくなりましたが、半世紀前はそんな国が列強諸国に立ち向かうためにはしっかり守備を固めて一撃で相手を倒すという戦術を余儀なくされたという概念があります。

そしてその中心にいるのがGKだったわけです。
となればしっかりお城を守る人が非力ではいけないわけです。
そういった文化が受け継がれていきGKの地位が社会的にも認められている、だからこそ小さな子供たちがそんなヒーローを見て大きく育ってきているのだと私は想像します…。

今回は「チームの守護神」について考察していきました。
専門外なテーマだっただけにわかりにくい部分があればご了承ください。
もちろん質問があれば答えていきたいと考えていますのでご意見いただければうれしく思います。

次回こそ「ストライカー続編」に焦点を絞っていきたいと思います、笑。
それではまた。
Ciao!

Kawa


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