カルチョの旅

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2005.3.10 NO.30


「ある少年の涙…」


人々の関心がヨーロッパ選手権に注がれる中、イタリアではもう一つの戦いが繰り広
げられていた…。

昨季レフリーの不利な判定に泣きながらも最後の最後でセリエA残留をかけたプレイ
オフの席を勝ち取ったペルージャ、そして新しく生まれ変わりセリエCから2年越し
でセリエA昇格が見えてきたフィオレンティーナとの入替戦である・・・。

私は当然のごとくペルージャを応援した。
イタリアに来て以来ホームの試合は欠かさずスタジアムへ駆けつけ、友人にはペルー
ジャのティフォージ(サポーター)がたくさんおり、そして何よりも監督のコズミに魅
了された私がペルージャを応援しないわけにはいかない。

誰もがあきらめかけていたセリエAの最終戦から数えた3節前の試合から「最後まで
あきらめなければサッカーは何が起こるかわからないよ」と友達に言い続け、エンポ
リ・モデナを最終節でようやく追い越し「どう、俺の言ったとおりになったで
しょ?」と鼻高々に語ってからプレイオフに向けて1ヵ月間、様々な思いがめぐらし
ていた。

そんな中で唯一の不安はその1ヶ月間のモチベーションとフィジカルコンディショニ
ングの維持であった。
なぜならフィオレンティーナはセリエBカンピオナート終了後の4日後にプレイオフ
を迎え、かたや休養は十分取れても実戦感覚から遠ざかっているペルージャとの出足
の差に違いが生じることは十分に考えられたからである。

私の不安は見事的中!

第1戦、ホームに迎えたフィオレンティーナは鋭いプレッシングと5−4−1システ
ムでペルージャの攻撃を完封…というよりも重い鎧を身に着け、軽い剣で戦うペルー
ジャのプレイヤーたちと必要最小限の機動力を兼ね備えた盾と重くて威力のある剣で
一撃必殺カウンターを仕掛けてくるフィオレンティーナは本当に対照的であった。

結果は見事なカウンターからの得点でフィオレンティーナが1−0で第1戦を勝ち取
り、いやペルージャの自滅と言った方が正しいだろうか、そんなシチュエーションで
フィレンツェのアルテミオフランキの第2戦を迎えた。

当日フィレンツェに足を運ぶことも考えたがチケットの売り切れは3日前から新聞で
情報をキャッチし、熱狂的なペルージャティフォージでさえ行くのをあきらめたこと
から友人の家で観戦することに決めた。

そこにはその友人とその息子シモーネと二人のイタリア人と私がまだかまだかと首を
長くして試合開始のホイッスルを待っていた。

第2戦の戦闘開始!
修正が期待されたペルージャだが内容は第1戦と同じテンポの攻撃を繰り返し、ゆえ
にボールを悪い形で奪われカウンターを受けるという展開。
悪夢を再び見たくないという我々の気持ちとは裏腹に後半開始3分フィオレンティー
ナのFWファンティーニに希望を打ち砕かれるゴールを突き刺される。

第1戦との合計スコアは0−2、しかしアウェイゴールルール(第2戦を2−1で勝
てばペルージャの3−2となる)のわずかな期待を考えればまだ望みはあった…。

しかし一向にリズムに乗れないペルージャは苛立ちも募り拙攻を繰り返すばかり。
そんなシュートが枠に飛ばない攻撃はフィオレンティーナのDFラインに落ち着きと安
定感を与え、5枚のDFラインはただでさえブ厚いのにサイド攻撃もままならない堅固
な城と化していった…。

ついにコズミは意を決し後半5分過ぎから攻撃的選手の投入を開始。
途中出場のド・プラドが後半サイドから鋭いドリブルでサイドを切り崩し始める。
しかし真ん中のDFの壁はいまだ破ることのできないまま時計は無常に過ぎていき、よ
うやくそのド・プラドが後半36分サイドから思い切りの良いシュートを決め1−
1。

大きな期待を抱かせる一発!
残り10分とロスタイムにすべてをかけるペルージャ!!!
…しかし結果は変わらないまま1−1で試合は終了した…。

沈黙と無常な雰囲気が漂う空間に我々は言葉もないまま、ただひたすらセリエAの余
韻を確かめるかのように画面を見つめていた…。

するとシモーネがいままで我慢していたのか、堰を切ったように泣き始め親父のファ
ビオに寄りすがり泣き叫んだ。
「ペルージャがセリエBに…来年はセリエBに…セリエBでプレイしなければならない
んだー!」

日本でも商売第一として名の通っているガウチ一家。そんなガウチは時にシーズン途
中でも価値の上がった売り時の選手は簡単に手放す。
そんなガウチのやり方をティフォージが好むはずはなく時としてスタジアムで反乱を
行うことも少なくない。いやむしろ「嫌われている!」と断言できる。

それでもペルージャのティフォージは幼い頃からペルージャを愛し、共に戦ってきた
のである。そして選手の悪いプレイにはとことんブーイングも浴びせ、もちろん良い
プレイには賞賛し勇気を与える彼ら。
シモーネの涙…それはすべてのティフォージの代弁をしているかのような涙であった
…。

今季22チームの中から果たしてセリエAに1年で復帰できるのか?そしてシモーネ
の涙はうれしい涙になるのか?…。(現在2位で昇格圏内に位置している)

私はシモーネとファビオと一緒にペルージャがセリエA復帰を果たすことを信じて止
まない。。。
 


「ペルージャのJrユース

Ciao、皆さん。
どうでしたか、今回のコラム?!

私の友達ファビオはジェラート屋を経営しています。
私は毎日そこでカルチョについて彼と一緒に談義し、冗談を言いあっています。

そんな彼(親父)も試合から3日間たった後もショックから立ち直れずにいました。
もちろん今年はしっかりセリエA復帰のためにBでがんばって応援しています。

本当に一つのクラブを応援している人々が集合体として存在するイタリア。
小さい頃から一つのクラブを応援して続けてきた18歳の少年(いや青年ですかね、
笑)がここまで号泣するなんて本当に感動しました。

日本にもごくわずかですがここまで悲しむ人はいるでしょう…。
しかし小さな頃からそのクラブ(それもビッグクラブではなく小さな田舎クラブを)を
応援し続け、プレイヤーとしてまだ活躍中の1人の少年が号泣するなんてまず日本で
は見られない光景です。

こんな少年が日本にもこれからたくさん存在するようなクラブを日本の指導者全体、
いや保護者の方々と共に支えていきたいものですね。

それでは皆さん。
Ciao.

Kawa
       
    ジェラテリーラ(ジェラート屋)のファビオと私


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