カルチョの旅

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2004.5.18 NO.19


「ファウルの要因…それとも容認?!」

Ciao!                
                (スピードに乗せたら破壊力抜群、マルティンス)

『ジーコおかんむり、“危険ゾーン”ファウル多すぎる!』

 サッカー国際親善試合日本代表3−2アイスランド代表の試合後の会見でジーコ監督(51)は声を大にして訴えた。
 「日本の選手が今から栄養剤を飲んで体を大きくしようとしても、それは無理な相談だ。だからこそ、不必要なファウルを安易に与えないことが重要になってくる」

先日某スポーツ新聞HPで目にした記事。
最近の3試合で日本代表はセットプレーの原因から5失点をしているらしい…。
今日はその背景にある「ファウルについて」プレイヤーの育成観点から考察していきたい。

日本ではここ数年で指導者の方々が様々な角度からサッカー先進国に近づこうと研究を重ねておられる。
とくにフィジカル面での劣勢が唱えられる定説をはね返そうと「ボール支配率を高める」「1対1における守備面の強化」etc…の課題を掲げ日々プレイヤー育成に力を入れているように思う。
その中で「不必要なファウルを与えないこと」を考慮に入れて行なうトレーニングのテーマはあるだろうか?!最小限度で考えられるトレーニングは「1対1の守備」ぐらいだろう…。

確かに危険ゾーンでのファウルは試合の勝敗を左右する鍵の一つであると私も思う。
ではそれに対して防御策のトレーニングを育成年代から意識して与えられているか?!それともプレイヤー自身が考えられるような環境にあるかどうか?!がどうやら将来の日本DFラインを支えるヒントになりそうである…。

それではなぜ危険ゾーンでのファウルが多いのだろうか?!

先ほど「フィジカル面での劣勢」と書いたがこれはあくまでも相対的なものであって個人的にはあてはまらないというのが私の個人的見解。
なぜならイタリアで活躍する中田英寿、オランダで活躍するパクチソン(UEFAカップでペルージャと対戦した時に観戦した)を見ればフィジカル面で格段にアジア人が諸外国のプレイヤー対して劣っているとは感じなかった…だから海外で活躍できているのだが…。
 


私はズバリ《ファウルに対する習慣》が欠けているのではないか?!と考える!!!
 

 日本では「スポーツマンシップを賞賛するフェア
 プレー」や「ルールを尊敬する」という遠い昔か
 ら伝わる日本武士道の精神がある。これは日本以
 外の国に対して大いに誇っても良い部分である。
 実際に私も指導者である以上これらのことを第一
 に考えプレイヤーたちを教育してきた…。いやむ
 しろ完璧な「ファウルなしの1対1における守
 備」を強く要求してきたのである。

しかしこれらに相反する『ルール破り』に関して日本では極端に拒絶反応を見せ「ファウル=してはいけない行為」という風潮があるように思える…。

私は指導者という立場からひとたびプレイヤーに戻ると、いかにして「マッチアップしている相手を抑えるか?!」という思考に入り、時には「ファウルをしてでも食い止める」いや体が自然に反応して「ファウル」を無意識にしている時がある。

このDFの心理には「ここで抜かれたら決定的なピンチになる!」という【不安】と「コイツに負けたくない」という【執念】をあわせ持つ。
この二面性がネガティブに作用したときに冷静さを欠き危険ゾーンで相手にファウルを与えてしまう。
だがこの二面性をコントロールできたときにはその冷静さから「自分がどこにいるのか?!」「この時間帯でのファウルは危険なのか?」を意識した『戦術的ファウル』を決行できる。
そして「与えてはいけないファウルか?」も無意識的に反応できるようになるのではないか?!
要するに1対1の個人守備戦術の中に『戦術的ファウル』で相手の流れを切る要素や自分がマークする相手に気分良くプレイさせない、という選択肢も自分の頭の中に持たせるのである。

ではこの『戦術的ファウル』果たして必要なのか?それとも不必要なのか?
答えは賛否両論…いや「不必要!」という声が多数を占めるかもしれない…。

でも…《戦い》である!
一度でも相手にスキを見せたり、「コイツはたいしたことがない!」と思われればそれは局地戦での戦いに敗戦を喫したことになり、チームに数的不利をもたらす。
この1対1における厳しさが「タフなフィジカルコンタクトに慣れる」という相乗効果を生み、時にファウルで止めたり止められたりという習慣が試合の中で生まれ「してはいけないファウル」「してもいいかもしれないファウル」の区別が認識できるような環境を作り出す!

もちろん「してはいけないファウル」の中には前述した「危険ゾーンでのファウル」の他に「相手を傷つけてはいけないファウル」という倫理的に考えなければいけないことは大前提にある。
☆ ちなみに私のポジションは中盤なのでファウルをしても危険なゾーンではない。(もちろんポジションは考えている)それからもう十分大人なのできちんとした倫理観を持って試合に臨むよう心がけている…たまにムキになるけど、笑。

そしてできればファウルをしなくても相手の突破を防御できるプレイヤーを育成すべきであると第一に私たち指導者は考えなければならない。

その一方で試合が始まってから予測の範疇を超えた身体能力を持つ黒人(国際試合を想定)との対戦や不足な事態が起きた場合の対応を大人になってから「すぐ実行にとりかかろう!」と言っても習慣付いていないので、できなくて当然だと私は考える。
ファウルなしで突破を阻止する理想を追求することも大事だが、マルティンス・アドリアーノ(共にインテル所属の黒人)を1試合通して戦術的ファウルなしで封じ込めることはほぼ不可能に近い。
もし異議を唱えたい方がいるならぜひペルージャvsインテル戦のアドリアーノ、インテルvsボローニャ戦(ブレシア戦かも?)のマルティンスをスカパーの再放送で見ていただきたい!!!

 


少し話が脱線するがイタリアにおける育成年代の子供たちの様子を伝えると…、
 

 小学生年代の子供たちにはそういった戦術的ファ
 ウルをコーチは要求しない。
 むしろ危険はファウルに対する罰則(グランドを
 走らされたり、ミニゲームでプレイ中止の宣告を
 される、笑)が存在したり、フェアプレイを心が
 けるようコーチからのアウトオブプレイからボー
 ルを返す指示などが飛ぶ。

(子供達で作戦会議?それともコーチからのアドバイス?)

でも子ども自身は「負けたくない」から「相手が強い!」とひとたび判断するとそれに対する防御策をあみ出そうとする様子がうかがえる。それが『戦術的ファウル』でないにしても…。
そして徐々に年代があがるにつれて子どもたちもサッカーの本質を理解するようになってくる。
なぜなら映像がそのまま自分の目に飛び込んでくるし、大人たちはカルチョの話題で口から唾が出るほどムキになって論争をしているわけだから…笑。

だから体つきが大人に近づくにつれてフィジカル面で一番ギャップの存在する中学生年代からこの『戦術的ファウル』が試合の中で見られる光景である。
それもコーチが要求するのでなく自分自身からそのプレイを選択しているケースが目立つ。

となればこのイタリアでは1対1に対する激しいフィジカルコンタクトの延長戦上にファウルがあり、それが《ファウルに対する習慣》を生んでいるという結論にたどり着くと言っても間違いないだろう。

ひるがえって日本はどうか?!
私は実際に日本代表の試合やJリーグを見たわけではないので「ファウルに対する習慣」が欠けているかどうかはわからない。
しかし日本代表U-19とイングランドの親善マッチがイタリアの深夜に放送されていた時に私も「不必要なファウルが多いなぁ〜」と感じ、さらに「自分たちの流れを無視したファウルをしている」「地域を考えてイエローカードをもらわない程度のファウルができていない」というのが印象である。つまり国際舞台では“試合の流れ”に乗れていないのである…。

先日ブラジルとアルゼンチンの2006年W杯予選をテレビで観戦した。
結果は3−1でブラジルが勝利を収めたが素晴らしいロナウドの突破に対し危険なゾーンでファウルを犯し3つもPKを与えたアルゼンチン。
それだけロナウドのドリブルは切れ味が鋭かったのだが、最終的にファウルの数を分析するとブラジル18・アルゼンチン22でイエローカードはブラジル3・アルゼンチン4であった。
両チームとも素晴らしい技術を発揮するサッカーを展開するように思いがちだが、拮抗した戦いの中では泥臭いファウルも十分仕掛けているのである!!!
結果的にはこのコラムに反してアルゼンチンは危険ゾーンでファウルを連発してしまっているが…。

皆さん!
プレイヤーたちが執念と意地で見せるファウルに近い激しいプレイを容認して少しは観察してみませんか?!コーチやレフリーが助けてくれない環境の中で「子供たちがどう成長するか?」なかなかおもしろいと思いますよ。(もちろん何でもありルールにならないようなコントロールが必要です!!!)

そして「ファウルに対する認識」を少し違った視点から考察してみませんか?!
プレイヤー以外の人々(ベンチサイドの関係者・レフリー・観衆)が「ファウルに対するプレイヤーの選択」を誤ったファウルなのか?戦術的ファウルなのか?イエロー・レッドに値するファウルなのか?を冷静に評価できるよう観る眼を成熟させることを提案します!
そうすればセットプレーから失点を避けるための『不必要なファウル』が逆に少なくなるかもしれません…。

最後に一つだけリピート!
「ファウルをしなくても相手の突破を防御できるプレイヤー」を第一に目指しましょう!!!笑

それではCiao!

Kawa

      
(ボールに向かってスライディング)         (危険なファウル)


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