カルチョの旅

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2004.2.21 NO.16


「緩急自在…自由自在…変幻自在?!」

Ciao!

最近プレイヤーとしての数々の「助っ人オファー」が私の携帯へ舞い込んできます。
もちろんアマチュアレベルですけど…。そこで今日は数あるオファーから選んだおも
しろい対戦相手との体験を皆さんへお伝えしようと思います。

イタリアでも1・2月の夜のピッチは寒く、しっかりとウォーミングアップを行なわ
ないと怪我をします。それに人工芝なのでボールの表面が水滴で滑りやすく、ファー
ストタッチは慣らしておかないと良いテクニックは発揮できません…。        
      (雪の降り積もった屋根)

しか〜し、そんなことなど気にも留めず遅れること20分、わたし達の対戦相手が現
れたのです。そしてアップも数分ボールを蹴っただけで完了。「さぁ試合!」といっ
た雰囲気で構えているのです。

「おっと甘く見てもらっては困るよ、そんなんじゃあ我々の勝利は目に見えたな!」
と私だけが思っていたのでしょうか、チームメイト(私以外は全員イタリア人で構成
されている)は「最初が肝心!しっかり守備をがんばろう!」とお互いに小声で話を
しているのです。そして私がそれを思い知るのに数分もかかりませんでした…。

…そのおもしろい対戦相手はなんとエクアドル人!!!
南米に位置するこの国の人々がなぜイタリアに来ているかは定かではありません。
しかしこのイタリアに滞在している時にまさかこのような国際的な試合が体験できる
とは思いもよらなかったので意気込んでピッチに向かったわけです。

そんなエクアドル人は前述した通りアップなんてお構いなし、試合開始から徐々に体
を動かし始め、私たちを翻弄していったのです。
どのように翻弄されたか?!
そうアップなしの背景には、しっかりとした技術の裏づけがあったのです。

試合開始直後からゆったりとしたボールポゼッションを展開。
イタリア人のDFが素早いアプローチを仕掛けてもなんのその、個々の高い技術力に
よって簡単に右に左にパスをさばいては移動、ドリブルで仕掛けて無理だと思ったら
仲間にあずけて移動を繰りかえしたのです。

そして序盤からエクアドルが仕掛け、イタリアはしっかり守ってカウンターの図式が
できあがったのは容易に想像できるでしょう。
体力がまだあるうちはアプローチも速く守備も組織だって機能していました。

しかしそのゴールを無理に狙うのではなく、相手を翻弄しながら虎視眈々とゴールを
うかがう彼らのパスワークに対して徐々に疲労が見え始める私たち…。
ついには先制点を許したのです。

そこからはもちろん私たちも同点を狙うことを目的に攻撃を仕掛けるのですが、守備
で疲れさせられボール保持者(とくに私)にサポートが少なく技術も彼らより低いた
めシュートまでもっていける機会が少ないのです。(奪ってもしっかりつなげない…
悲。)そして点差が徐々に広がり始めついには8―2になったのです…。
 


         (天気の良いペルージャの町)

そこで「何がこのような差を生むのか?!」の考察を開始!!!
なぜ疑問に思ったか?!
条件が一緒だからです。

彼らの身体能力がそれほど高いわけでもなく、そして年齢も若くて体力が有り余って
いる様子でもない。
むしろ若干横に幅広い体型と日頃おいしくて甘いものを満載に食べていそうな見事な
お腹がフェイントをかけづらそうな感さえある、笑。
そして前述したテクニックも私は見劣りしないような気がする(他のイタリア人は少
し厳しかったかな…)。

なぜなんだろう…?!
試合開始時点では勝つ気満々だった私も、ここからは「負ける悔しさ」よりも指導者
としての「観察力向上」を選択したわけです、笑。

個々に技術がある場合、そのチームのボールポゼッション率は自然と高くなります。

しかしただボールをまわすだけなら相手にとってそれほど脅威ではありません。
なぜならサッカーの攻撃第一の目的はゴールを奪うことだからです。
それでは彼らの攻撃には何が隠されていたのでしょう…。

それはゴールを狙うプロセスにしっかりとした技術に加えて、1対1における『緩
急』・『間合い』・『味方を上手く利用するタイミング』が隠されていたのです。

『緩急』は文字通り「ゆったり」と「速く」です。この1対1における微妙な『緩
急』の差は私にとって筋力的な反応の変化を狂わせ、次に反応しなければいけないタ
イミングで反応できなくさせてしまうのです。まぁそれに引っかかる私もまだ1対1
の守備が甘いんでしょうが…。

『間合い』は言葉で言い表わせにくいのですが、前述した『緩急』に似ています。
ボールを奪われない「ボールの保持の仕方」とでも言いましょうか、いつでも攻撃が
できていつでも相手から回避できるボールコントロールの仕方を常に保っているので
す。

『味方を利用するタイミング』はテクニックがあればあるほどダイレクトでさばくの
が上手という見本のような感じです。パスを出すと見せかけて、ドリブル!ドリブル
すると見せかけてパス!といった相手の逆をつく『味方の利用』が絶妙なのです。

ともすればドリブルで相手を2、3人と抜き去るとテクニックがあると思われがちで
すが、それが味方の攻撃リズムを狂わしている場合もあることを指導者は見ていない
といけません。彼らは誰がどんな攻撃を仕掛けてもその攻撃のリズムが狂うことがな
いのです。ドリブルとパス交換のイマジネーションがシンクロしているのです…。

そしてボールを保持する前に周りを見ておく習慣も大事ですが、彼らはボールを保持
する瞬間に周りを見ていない場合でも「頭の後ろに目がついているのか?!」と疑いた
くなるような身のこなしで時にはファーストタッチでスペースへ逃げ、時にはダイレ
クトで味方にはたき、ボールを奪われる危険を回避するのです。要するに察知能力が
研ぎ澄まされているのです。

次にコンビネーションです。
個々がそのような高い技術力を誇っている上にコンビネーションが加わったらもう
「鬼に金棒!」ですよね?!
実はそんな「鬼に金棒!」状態を作り出されてしまったのです…。
私が一生懸命プレッシングをかけても常に2対1が形成され、私の味方がDFにおいて
援護し2対2になればさらには3対2を形成するのです。
それも別にボールに近づいてサポートするのではなく遠い位置に存在する、それほど
その瞬間にはエネルギーを使っていない余裕を持っている味方をその3枚に入れて攻
撃するのが上手いのです。

よく私は日本で指導していたときに「サポートを速く!」と言っていたことを思い出
します。これは「味方がボールサイドに寄ってその他のプレイヤーをサポートする」
イメージをプレイヤーたちに持って欲しいと思って要求をしていたのですが、エクア
ドル人の彼らは無駄に近づくのではなくサポートの距離・サポートの角度・個人の判
断力で数的優位を形成するのです。

だから後ろの味方がパスカットしやすいように、私自身が第一DFとしてアプローチを
仕掛け限定しているつもりでも彼らは常に頭の中で数的優位ができているわけですか
ら私のプレッシャーは蚊に刺された程度なのでしょう、苦笑。

そして最後に決定力です。
これまた憎たらしいぐらいにゴール前で落ち着いているのです!!!
なぜあれほどまでにゴール前で落ち着くことができるのでしょう…。
技術もさることながら相手GKの逆をつくことを楽しんでいる、その遊び心が素晴らし
い決定力を誇っていると考えられます。

少し話は逸れますが最近イタリアでも『Pallonettoパロネット(ループシュート)』
『Cucchiaioクッキアイオ(※直訳すると「スプーン」という意味ですがループシュー
トよりも小さい規模のシュートのことです)』といった芸術的シュートが話題をよん
でいます。
GKからすれば「こんなシュートを決められたら一晩中眠れない(※実際にブッフォン
が新聞でコメントしていました)」といった遊び心あふれるシュートは、高い技術と
そのイマジネーションを持ち合わせてこそ生まれるのです。

…となればいたるところで2対1・3対2が形成され、そこに前述した個々の能力が
加わってシュートまで持っていかれたらどうなるでしょう?!
答えは明白ですよね?!

最近イタリア(欧州)サッカーにどっぷり浸かっていた私…。
エクアドル人サッカーを「南米サッカー」としてひと括りにしては南米諸国、そして
ブラジル・アルゼンチンサポーターに怒られそうだが、この経験は間違いなく私を南
米に行く動機を駆り立てる事件だったのであります!!!

イタリアで南米サッカーの経験…南米に行ったらもっとすごい経験を味わえるのだろ
うか?!私の興味は尽きないのでした…笑。

それでは皆さん。
Ciao.
          
       (私以外は全員イタリア人 ※一番右上が私) 
Kawa


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