カルチョの旅

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2004.2.9 NO.15


「ちいさな差…でも大きな差…?!」


Ciao!

前回は第4回バスティア国際トーナメントU-14の未来を担う海外若手プレイヤーの様
子をお伝えしました。
今日はその大会に参加した「FCフレスカ神戸(以下F神戸と略称)がどのような戦いを
演じたか?」をお伝えしようと思います。

 (フレスカイレブン)

F神戸はJrユース年代の大会おいて毎年好成績を残すチームである。2001年には
日本クラブユース選手権でベスト8という成績を残し、昨年の夏のフェスティバルで
はこの1989年生まれのチームがガンバ大阪にも勝利している。そして今年度の兵庫県
のクラブユース連盟新人戦においては優勝も収め、関係者は「第19回日本クラブ
ユース選手権に向けて期待が持てるチームである」と語っておられた。そのチームが
海外の諸クラブにどのような戦いを挑み、どのような成績を収めるかは大会前に私も
非常に興味があった…。
 

ところが結果は残念ながら1分け3敗(結果は前回星取表を参照してください)。…す
べて惜敗と言っても過言ではなく、実際終盤に失点を重ねた試合が多かった。惜しむ
らくは大会の終盤のあたりから厳しいプレッシャーに慣れはじめた頃にすべての試合
を終了したことである。


 《大会初戦の入り方は重要!!!》
 ☆開幕戦
 初戦は大会主催者側の粋な演出から招待国同士の 
 開幕戦となった。そう前回のコラムでも触れた強
 豪アヤックスである。
 しかし指導者が始めから『強豪』という先入観を 
 持っては試合前から相手にアドバンテージを許してしまうことからF神戸監督の高橋氏も試合前からそういった先入観は持たないよう十分意識されていたようである。
アヤックスとは宿舎も同じで移動も一緒になることが多く開幕戦が終わるまでは選手
間同士ではお互いに顔色をうかがっていた様子であるが、そういったことも手伝い選
手たちは臆することなく試合に入っていけたように思える。

試合に先立ってバスティア選手の1分間の追悼式が行なわれた。
幼いプレイヤーが若くして亡くなったのは誠に残念でならない。
しかしこういった地域のクラブの大会でチーム側の配慮から追悼式が行なわれたこと
はとても大事なことである。プレイヤーたちも良い経験を体験させてもらったのでは
ないか…。

☆フレスカ神戸が先制!…しかし追加点が…。
さて、試合開始である。
試合開始直後から激しいプレッシングでアヤックスに襲い掛かるフレスカのプレイ
ヤーたち。スタートの入り方としては申し分ない出来であった。
アヤックスはフレスカ陣内に攻め込めないままボールをつなぐのが精一杯で、逆にF
神戸は前線から激しくチェイシングをかけた勢いでそのままリズム良い攻撃につなげ
た。
そしてその鋭いプレッシングからの攻撃が前半6分に実を結ぶ。
中盤でボールを奪った瞬間FWの三浪潤平(明石FC出身)が素早くアヤックスDFラインを
切り裂くように走りこむ。
当然アヤックスDF陣はそのFWに引きつけられサイドにはスペースが生まれ、サイド
ハーフの北山研人(平岡南FC出身)がペナルティエリア付近でボールを受け思い切りの
良いドリブルを仕掛ける。
後から追いついたアヤックスDFを置き去りにした瞬間アヤックスDFがたまらず引っ掛
けてしまいPKを獲得。これをキャプテン坂東康隆(多井畑SC出身)が落ち着いて先制し
た。
この先制点でしっかり自分たちのリズムを作ったF神戸は素早いパスまわしから再三
アヤックスゴールを脅かした。

しかしシュートの精度が悪く追加点が奪えない。自分たちのリズムの間に追加点が奪
えないことが後々試合の勝敗に影響することは誰もが知っているであろう…。
後半アヤックスはチームのキーマンAnita(アニータ)をトップ下へ上げて攻撃的にシ
フトチェンジ。一方F神戸は前半の調子を持続すべく追加点を狙う姿勢を維持したま
ま試合を進めた。
F神戸のプレッシングに慣れたアヤックスは前半と同じペースでパス回しを展開。た
だ前半と変わったのは明らかにゴールを奪う姿勢を選手おのおのが強く意識していた
ことによって相手陣地に深く侵入するパス回しも付け加えたことである。Anitaの脅
威を感じている選手たちは彼を封じ込めるために守備のサポートを強く意識し始めた
のである。当然フレスカDFラインは徐々に下がり始め、奪ったボールも効果的な攻撃
につなげないままアヤックスのボール支配率が上がっていった。

☆同点、そして逆転負け…。
徐々に時差の影響や前半の体力消耗から疲労の色が見え始め、プレッシングが機能し
なくなってきたがさすがは兵庫県チャンピオンである。お互いに声をかけ合いDF面で
辛抱強くアヤックスのキーポイントプレイヤーに自由を許さなかった。

しかし後半16分、アヤックスがさらなる攻撃を仕掛けるために選手交代!それまで
ワントップでしっかりと基点を作っていたFWのFrank(フランク)をトップ下に下げ、
トップには小柄ながらもボールを変幻自在に操るObiliz(オビリッツ)を投入し、
Anitaをボランチに下げたのである。この時ピッチ上の何人の選手がこの変化に気付
いたのだろうか?!

マークが微妙にズレることは試合中でもよくあるがこの時こそお互いの確認が必要で
あったと言える。ベンチサイドから遠い位置に私はいたのでベンチからの指示の声が
あったかどうかは確認できなかったが、こういった国際大会では少しの変化に敏感に
対応していかないと必ずそのポイントを突かれるのである。同点を許した得点の経過
は前回のコラムでも触れたとおりである。

さらに後半24分には逆転ゴールを許してしまうのだがこれには布石があった。FKの
守備の場面においての選手交代はセオリーとして絶対に行なってはいけない行為であ
る。なぜならその選手がその交代選手のポジションまでたどり着くまでにレフリーは
笛を吹きプレイが再開されることは間違いなく、そうなるとマークが間に合わなくな
るからである。そして選手間では「誰が誰に替わるのか?!」に意識が集中し相手
マークに対する意識が欠如することも理由の一つなのである。

しかしF神戸は失点前のアウトオブプレイで選手交代を行なってしまった…。普段な
ら全国大会経験も高いF神戸ゆえに考えられない失点である。ベンチも含めて国際大
会の経験不足が招いた逆転負けであった。
 


《イタリアのチームは粘り強く勝負強い!!!》

☆日本では見られない光景!!!

第2戦からはイタリアチームとの対戦が続いた。テルナーナ(現在トップチームはセ
リエBで上位。来季はセリエA昇格の可能性が高い)との一戦は同点で迎えた後半25分
あと数秒で勝ち点1を獲得できそうなところで、まるで絵に描いたようなスーパーボ
レーシュートを決められてしまった。この日は1日2試合という日程で午後にユヴェン
トス戦を控えていたので若干メンバー構成を考えての戦いであった。

それにしてもテルナーナのプレイヤーたちの粘り強いこと!守備では激しくアプロー
チを繰り返しゴール前では体を投げ出してスライディングまで見せゴールに迫るその
迫力は間違いなく日本のこの年代では見られない光景であり(もしかしたらJリーグで
も見ることができない)初戦とは全く異なるリズムにF神戸のプレイヤーたちも対応し
切れないまま勝ち越しゴールを許した一戦であった。

☆その上さらにインテリジェンスとテクニックを兼備したユヴェントス!!!
第3戦は待ちに待ったユヴェントス戦である。F神戸はこの戦いのためにテルナーナ戦
はレギュラーを温存していたので見応えのある一戦となった。前半の最初から積極的
なプレッシャーでユヴェントスを自由にさせなかった。とくに出だしのアプローチが
素晴らしく、それがインターセプトにつながり攻撃に移る基点となっていた。

だが攻撃面では失点を恐れたのかFWへのサポートが少なくユヴェントスがボールを奪
い返しては再び攻撃するという展開が多かった。サポートにしっかりといけている時
はユヴェントスゴール前まで迫っていたので果敢に勇気を持って数的優位を形成して
いれば得点も奪えていただろうが、その分失点も覚悟しなければならないほどユヴェ
ントスのプレイヤーたちは先ほど述べたテルナーナの粘り強さにさらにインテリジェ
ンスとテクニックを兼ね備えていたのである。

どのように兼ね備えていたか?!キックの正確さと強さがまずちがう。DFからのクリア
がつながっている。言い換えれば無駄なクリアをせずにしっかりつないでいる。そし
て個々の判断において攻撃のバリエーションがアイディア豊富なのである。例えば
ボールを受ける際に1)前を向くターン、2)逆をつくトラップ、3)落としてポス
トプレー、4)壁パス、スルーパスを狙うetcである。要するにボールの受け方に幅
があってボールの出し手もキックに自信があるから相互の信頼関係がさらに相乗効果
を生んでいるのである。

さらに全員が様々なシチュエーションで数的不利だと感じたらCK、FK、スローインに
持ち込む賢さ(日本ではポルトガル語でマリーシアとよく表現されている)を常に持っ
ている(先制点はCKのこぼれ球をサイドに展開してFWが二人個人技でかわして得点し
た)。そして驚くほど遠い位置からのミドルシュートを打ってくるのである(実際に
バーを2回叩いた)。

それでも前半を無失点で切り抜けたF神戸だったが後半開始直後からユヴェントスの
猛攻撃を受け徐々に劣勢に陥った。F神戸のプレッシングは衰えていないのだがそれ
に慣れたのかそれとも監督から激を受けたのか、いずれにしてもこの時アヤックスと
のリーグ1位争い演じていただけに最低でも勝ち点3を目指しているユヴェントスのプ
レイヤーたちは落ち着きを兼ね備えた上で攻撃を仕掛けてきたのである。ちなみにユ
ヴェントスの午前中アヤックス戦(1−1の引き分け)に出場したレギュラーはフレス
カ戦では数人が控えに周り、若干の控えメンバーと従来とは異なるポジションでレ
ギュラーが出場し戦いを挑んできたのであった。

そしてポジションの特異性を感じさせないユヴェントスは1−0になってからは磐石
の態勢で見事なタイミングとスペースの利用でカウンターをF神戸に再三お見舞いし
たのである(F神戸が同点を目指したため無理な攻撃を仕掛けなくなった分その裏にあ
るスペースを利用したカウンターの精度は高かった)。勝負を決定付けた2点目は本当
に見事なカウンターアタックであった。

さてユヴェントス戦のF神戸のプレイヤーであるがフィジカルコンタクトに慣れたせ
いか逆に無理なフィジカルコンタクトを仕掛け(ファールと正当なフィジカルコンタ
クトを混同していた場面もあり)無駄なファールが多くなっていた気がする。実際に
CKやFKを不用意に与えた回数が多々あり、それがユヴェントスの波状攻撃を招き彼ら
を落ち着かせた要因にもなっていたように思う。前半を0−0で終えていたので逆に
相手を焦らせるような試合運びを展開して欲しかった。

そして前述したが前半の終わりから後半最後まで攻撃が極めて単調であった。フリー
なプレイヤーがボールを運ばずに前へ前へとキックしていた。とくにユヴェントスは
屈強でクレバーな3人のDFを並べていたのでFW二人では数的不利な上に不正確な
フィードで何もできないという状況だった。この辺は相手がより強くなっても落ちつ
いてボールをまわしていく必要があると感じた。F神戸監督の高橋氏も「守備に手一
杯(判断力・組織力)で攻撃を構築するところまでできなかった」と語っておられた。
 


《最終戦でようやく勝ち点を獲得!!!》
☆地元チームの声援をはねのけるたくましさ
大会は3日目を迎えF神戸にとってはリーグ最終戦であると同時に大会最終戦にもなっ
た。兵庫県チャンピオンとしてそして日本クラブユース選手権へ向けて第一歩をここ
から踏み出したいF神戸は一戦必勝の思いでバスティア戦に臨んだ。
対するバスティアも大会主催チームとして意地がありお互い一歩も譲らない一進一退
の攻防には手に汗を握った。会場のスタンドは地元の関係者で満員になっており雰囲
気はまさにアウェイであった。そしてそんな雰囲気が後押ししたのかやはり先制点は
バスティア。試合開始から攻めるもののなかなか決定機を作れないF神戸。前半は1
−0でバスティアがリードで折り返した。

そんな中で迎えた希望の光は遠征前の負傷から復調を感じさせるエース辻智人(FCフ
レスカ→FCウイングス出身)の一撃であった。イタリアチームとの数々の対戦経験が
生んだまさにボールを奪って素早い展開からの得点であった。残り5分地元声援をは
ねのけるたくましさを身につけたフレスカイレブン(トゥェンティー※監督も含めて)
は冒頭にも書いたが試合の重ねるごとにイタリアの激しいプレッシャーと判断の速さ
にいつの間にか対応できるようになっていった。できるならば1ヶ月前から現地入り
していればせめて2勝はできていたと思うのだが…。そしてあと5分あったら勝ち点
3は獲得できていただろう…ん〜非常に惜しい。
 


《日本のコーチたちへ》
しかしこれまで述べたちいさな差が実は大きな差であることは間違いないでしょう。
日本のプレイヤーの意識改革を各指導者が少年年代から磨いていかなければこの差は
いつまでも埋まりません…いやそれどころか広がっていくと思います。世界の指導方
法や戦術は毎年進化していくものです。

指導者の方々は自分の経験も重要ですがそれだけに頼らず日々精進していくためにも
TVや雑誌ではなくぜひ現地に赴き、直接自分の目で確かめて観てください!!!自分の
サッカー観やコーチングの幅が間違いなく広がります!そして日本が世界を担うプレ
イヤーに成長できるよう育成してください、期待しています!
 


《この経験を生かして世界を目指して欲しい》
 

☆8万人と聞くだけではなく実際に目の当たりにした彼ら!!!

イタリア遠征もついにあと2日を残すところとなった彼らの最終目的はあこがれのセ
リエAのプレイヤーたちが激突するローマオリンピックスタジアムのローマvsミラ
ンの試合観戦!!!
スタジアムはもちろん超満員で発炎筒はローマカラーで炊かれ熱気ムンムン、スタン
ドのボルテージは最高潮である。F神戸の選手は「やっぱり本場は違うなぁ〜」と感
激していたのがとても初々しかったです、笑。
ところでこのカード、実は首位決戦でチケット入手は困難極めたのです。そんな対戦
カードに何の苦労も知ることもなく入場できた彼らはなんと幸せなのでしょう!!!
(私はいまだにビッグカードのチケットを入手できたことがない!)
イタリア遠征を実現させてくれたお父さんお母さんたちに感謝すると共にチケットを
手配してくださったコーディネーター小山さんにも感謝しましょう!!!

試合は前回のコラムでも触れたとおりミランが2−1でホームのローマを下しまし
た。
ゆえに試合後の大合唱が聴けなかったのが非常に残念ではありました…。
しかし間違いなく彼らの心の中には本場のカルチョが一生の思い出となったはずで
す。

さて若い年代からこんな経験ができることは本当にうらやましい限りであります。
ぜひこの経験を生かし英語と世界史はしっかり勉強して欲しいと思います!!!
もちろん教科書の中ではなく今回のように実際に海外へ行ってみることが大事です。

海外に行くことによって異文化を体験し、日本の良さをあらためて認識するも良し、
逆に日本よりも素晴らしい文化を発見して吸収するも良いわけです。

「通用しない英語」よりも「利用しない英語」の方が将来役に立ちません。
「利用していない英語」をぜひ「通用しなかった英語」にしてみてください、笑。
そうすれば自分の世界が広がっていきますから…。

今回はフレスカ神戸の海外奮闘をレポートしました。
彼らがこの2004年どのような成績を残せるのだろうか?!遠くからまた応援しよう
と思います。
将来ユヴェントスやアタランタ、ローマ、アヤックスのプレイヤーと共に成長するこ
とを期待して…。

それでは皆さん、Ciao!

Kawa


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