カルチョの旅

top▲

 

2004.1.29 NO.14


「世界の未来を担う若者たち!!!」


Buon Anno Tutti!
皆さんあけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします。

 冬休みも終わり、セリエAも再開されましたね。いきなり首位を争うローマvsミラン戦で幕を開けましたが、明暗を分けました。

 インターコンチネンタルカップに敗れたミラン。しかし、冬休みの間にリフレッシュに成功。守備の要ネスタを欠き、インザーギをケガで欠いたにもかかわらず、素晴らしい試合を見せてくれました。中盤の見事なパス回しから、現在得点王のシェフチェンコが2ゴール。今季、ホームゲームで鉄壁の守備を誇る(7試合でわずか失点1)ローマを葬り去ったのです。

 8万人のロマニスタたちは、ため息と共にオリンピコスタジアムを後にしたのでした…。

 将来、そんな素晴らしいゲームを演出してくれるのはどんな選手たちなのか?指導者であれば興味がわくものです。新年早々、イタリア中部ウンブリア州バスティアという町で、第4回バスティア国際トーナメントU-14(1989年〜1990年生まれの選手が対象)が行われました。未来を担う若者たちの活躍をこの目で確かめようと、私も足を運んできました。

 参加チームは、イタリアからユベントス、ローマ、ペルージャ、エンポリ、アタランタ、テルナーナ、バスティア(すべてのチームがこの年代における各州のセリエAリーグに所属している)。

 外国からは、オランダのアヤックス、イギリスからリーズユナイテッドと若手育成に定評のあるチームが招待されました。そして皆さんもご存知の通り日本からも、FCフレスカ神戸(以下F神戸と略称)が招待され、計10チームで大会は繰り広げられたのです。

 大会の形式は、1試合25分ハーフ。予選は、2グループそれぞれ5チームで争われ、各1位が決勝戦を行い、各2位が3位決定戦を行ないました。

 開催された過去の大会では、第1回がボローニャ、第2、3回ともローマが優勝という結果。今回から、初めて海外のクラブチームを招待し、大会の注目度は俄然上がりました。
 今回は日本から参加したF神戸の試合にすべて帯同させていただき色々なチームとの対戦、そして海外の強豪クラブ同士の対戦もいくつか観戦できたので、この年代における海外のプレイヤーと日本人プレイヤーの比較し分析しました。そのいくつかの試合から日本の若手育成指導者へ少しでも参考になる点があれば嬉しい限りです。


       BASTIS CUP 2004(バスティア国際トーナメント)

A組 AJAX FRESCA BASTIA JUVENTUS TERNANA 勝点 得失 順 位
AJAX ○2-1 ○2-1 △1-1 ●0-3 7 -1 3
FRESCA ●1-2 △1-1 ●0-2 ●1-2 1 -4 5
BASTIA ●1-2 △1-1 ●0-3 △0-0 2 -4 4
JUVENTUS △1-1 ○2-0 ○3-0 ○1-0 10 6 1
TERNANA ○3-0 ○2-1 △0-0 ●0-1 7 3 2
 
bグループ UNITED ROMA ATALANTA PERUGIA EMPOLI 勝点 得失 順 位
LEEDS.UNITED ○2-0 ●0-3 ○1-0 ●0-1 6 -1 3
A.S.ROMA ●0-2 ●0-1 △1-1 △1-1 2 -3 4
ATALANTA ○3-0 ○1-0 ○1-0 ○3-0 12 8 1
A.C PERUGIA ●0-1 △1-1 ●0-1 ●0-2 1 -4 5
F.C. EMPOLI ○1-0 △1-1 ●0-3 ○2-0 7 0 2
              決勝戦ユヴェントス 2−0 アタランタ
              3位決定戦テルナーナ 0−0PK4−2 エンポリ
 

 結果見ると今大会はご覧の通りすべてのチームの力が拮抗しており、戦い方次第ではすべてのチームが上位に名を連ねてもおかしくなかった…。
とくにアヤックスが予選で敗退したことは誠に残念であり、大会関係者や観衆は最終日までアヤックスのサッカーが観たかったのではないだろうか?!

では、どんな魅力がアヤックスに隠されていたのでしょうか?

 アヤックスのスタイルは、ご存知の通り、3−4−3。これは今回のチームにも共通していました。
 サイド、中央突破と、多彩な攻撃を展開するものです。大会MVPにも輝いたANITA(アニータ)という4番の選手が、全盛期のライカールトを彷彿とさせるプレイでチームの要となっていました。

 そして評判通り、徹底的にGKからビルドアップを行い、ゴールに向かう攻撃を行ないます。敵につめられても逃げません。サイドに開くサポートの仕方が徹底されているのです。特にドリブルとパスの使い分けの判断が良く、常に3人目の選手が絡んでくる動きがあります。サイド攻撃と、中央突破の使い分けの判断も良かった。

 対フレスカ戦での同点シュートは、中央突破から流れるようなパス回しから、目の覚めるようなミドルシュートでした。アヤックス9番Frank(フランク)は何の迷いもなく右足を振り抜きました。これは日本の選手には見られないプレイ。素早い判断でイメージを瞬時に描き、体全体はリラックスしていながらも強烈なシュートを放つというものでした・・・。

 ここまでは、私の抱いていたアヤックスのイメージとそれほどかけ離れたものではありませんでした。本当に驚いたことは、そのチーム構成だったのです。

 アヤックスと空港で初対面した時の驚き。本当に、14歳(13歳)か?と目を疑う位の小柄な選手がたくさんいたのです。試合を見ても、大きくフィジカルが強い選手はわずか3人。その他は、もちろんテクニックはあるものの、本当に小さな体の選手ばかりだったのです。

 こんな体つきで、果たしてイタリアの激しいサッカーに対抗できるか?と思っていたことは、大会が進むごとにつれて杞憂に終わりました。

 初戦(F神戸戦)を見事な逆転劇で飾り、注目の第2戦ユヴェントスとの戦い。それは、本当に観衆を魅了するゲームでした。体つきだけ見れば、大人対子供!そんなマッチアップが、至る所で繰り広げられたのです。ユヴェントスの一番大きな選手と、アヤックスの一番小さな選手なんて身長差からすれば約40cmあったのではないだろうか?ジャンプ力を加味したら、その差は優に1mにも及ぶ可能性はあります。

 そんな小さな体のプレイヤーたちが、いかにフィジカルの強く、インテリジェンスとスピードを兼ね備えたユヴェントスというチームに立ち向かったのでしょうか?以下、彼らを見て気づいた点です。
(アヤックス)
 


1)フィジカルが強くスピードのある相手にしっかりと対応するDF
- 落ち着いている。自分たちのプレーに自信を持っているからあわてない。
- アプローチの予測が事前にされている。相手がボールを受けた瞬間に最大限間合いを詰めることができている。
- 1対1のDF局面において、ボールを凝視しているので、フェイントに惑わされない。
- 抜かれそうなタイミングや、相手からボールが足元を離れた瞬間に、スラインディングで防御することのレベルが全選手ともに高い。
- ステップの仕方と体の向き方が良い。特に体の重心を保つバランスが安定している(写真を撮影すると体の軸がしっかりと安定していることが目に見えてわかる)

2)三角形のサポートの作り方と視野の確保
- 動き出しのタイミングと動き直しのアクションの質が高い。
- 無駄に動いて疲れるのではなく、いつも「ここ!」というタイミングでの動き出しが流れるようにできていた。
- 味方の位置の把握ができている。特に声(3人目の動きを促す声)による指示がいい。味方の動きを見えていなくても追い越してくる味方の動きで予測を察知している。

3)ボールキープ
- ボールを両足で操ることができるから、相手が激しくプレッシングに来てもあわてない。どこへボールを置けばいいか?を理解している。
- ボールの動かし方に緩急があり、相手を容易に近づけさせない。また、相手が奪う素振りを見せたらかわす姿勢を保つ
- 攻撃面でも体の重心を保つバランス(姿勢)がとても良い。まず手を上手く使って相手をブロック。そして両足でコントロールできるからどこにボールがいっても体のバランスが崩れていない。
- バランスを崩した後の体の重心の立て直しが速い。恐るべき怪物Anita(アニータ)選手が、後半ロスタイムにユヴェントスの二人をかわして同点シュートを放ったこの場面。一人目を抜いた後バランスを崩したにもかかわらず二人目がアプローチしてきた瞬間にしっかりと体勢を立て直し、イタリア人観衆を魅了するスーパーシュートをユヴェントスゴールに突き刺した!!!試合終了後はユヴェントス応援団からも拍手喝采も受けた。またその他のプレイヤーも激しく
フィジカルコンタクトを受けたにもかかわらず次の動作がしっかりとできていたのである。

4)キックとヘディング
- 「ヘディングとボレーどちらを行なうか?」判断の難しいボールに対して迷わない。一番良い選択をしていたように思う。
- ヘディングにおいては小柄ながらも最高打点を意識してジャンプを図っていた。
- 小柄ながら強いシュートを放つ: 強いインパクトを与える体の軸回転が安定しているからであり、強いパスが出せるのもバランスが良いからである。特にFKで、左利きの小柄な選手がカーブをかけてドロップさせ、弾道の速いシュートを放っていたことは本当に驚きであった。


 「その年代におけるいい選手をスカウトするのは当然だが、より大事なのは成長度。大人になった時を見越して選手発掘を行う」と話すアヤックスのコーチ。アヤックスの選手発掘と選手選考の基準の秘密を探るには、オランダに足を運んだ方が良さそうである…。


 さて、ベスト4に残ったのはすべてイタリア勢である。
最近イタリアサッカーが「守備的でつまらない!」といった風潮がマスメディアを通して伝わってくるが果たしてそれが育成年代でも展開されるのであろうか?!
答えは「No!」である。決勝戦は北イタリア勢同士の対戦となったが、アタランタはベルガモ市のチームでイタリアの若手育成No.1チームとの呼び声も高い。一方のユヴェントスも各年代で常にチャンピオンになることが宿命づけられており両チームとも優勝をかけて一歩も譲らない非常にアグレッシブな一戦であった。

 ユヴェントスは4、3バックどちらも今大会で使用しておりシステムを柔軟に使い分けることができていた。そしてポジションを複数こなすプレイヤーが数多くいたことは興味深く、それもサイドバックがサイドハーフとかではなくボランチがFWをこなしたことなどは驚きでありました。決勝戦ではユヴェントス本来の一番システムが機能している4−4−2で臨んでいました。FW二人は身長が私よりも高い180cm台で速くてテクニックがあり、とくにSanci(サンチ)選手は得点王になりドリブルからシュートまでの突破が魅力的なプレイヤーであった。

 中盤はボールを失った局面になるとすぐにDFに入ってボールをカットし、判断のスピード・活動量とも申し分なかった。この攻守の切替の場面でよく日本では「50%ボール」と表現されるがこういう概念はイタリアにはなくどちらの局面になるかを予測すること自体が選手に要求されるので、コーチやベンチサイドから「きりかえっ!!!」という言葉が発せられることはない!ユヴェントスの選手を見ているとまさにこの言葉がピッタリと当てはまる。

 とくに先制点を奪ったユヴェントス8番のMaritato(マリタート)という選手のミドルシュートは失ったボールをすぐに奪回しアタランタのDFが整わないうちに放たれた。このプレーはアタランタよりもこういった個々の予測が速かったことが結果につながった場面であった。シュートも素晴らしく観客席から「このコースに打てば入るんだろうけどなぁ…」と私が予測していたところにどんぴしゃで決まったのである!とくにユヴェントスの選手はキックの精度が非常に高かった。

 そしてタイトルがかかったときのユヴェントスの選手の集中力、組織力、勝利に対する強い意欲は見張るべきものがありました。やはりこの年代でも『勝利』というキーワードは必要不可欠であると感じた決勝戦だったのです。
一方アタランタで注目したのは11番の黒人選手Cone(コーネ)である。アタランタは 彼を基点とし数的優位を素早く形成しユヴェントスゴールを脅かした。彼は表現的に言えば豹みたいな感じで(インテルのマルティンスをイメージしてください)瞬発力、加速力、ボディバランスは素晴らしかった。実際にユヴェントスは彼を封じ込めるのに前半はかなり苦労した。

 彼がなぜあれほどまでに基点になれたか?!DFの位置やゴール、味方すべてを確認するために、ボールが自分に供給される前、そして自分がボールを受ける瞬間にも首を振って周りを確認し素早く判断できていました。そのすさまじい判断のスピードと抜群の身体能力はユヴェントスのDF陣を追詰め、彼らが何度となくタッチラインに逃げていたことは印象的でありました。とくにCB二人は彼の突破に対するドリブルに手を焼いてシーンが今も頭に残っています。将来はこういった黒人選手に対応できる日本人プレイヤーを育成していかないと世界には太刀打ちできないことを想像させる決勝戦だったと思います。

 世界の未来を担うプレイヤーたちの観察…世界にはまだまだ数え切れないプレイヤーたちが眠っているのでしょう。
まだまだ語りたいことは山ほどあるのですが言葉で伝えきれません!

 
 イタリアでミニチャンピオンズリーグの観戦!!!
スペインとドイツのチームがいなかったのが少し残念でしたが様々な国のサッカーが楽しめました。
次回はFCフレスカ神戸がどのような戦いを演じたか?!の考察をしていきます。
それでは皆さん、Ciao!

   (優勝のユヴェントス)
Kawa


<戻る>