カルチョの旅

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2003.12.21 NO.13


「見えないプレッシャー・・・とは?!」


Ciao.
先日大変貴重な体験をしてきましたので、ぜひ皆さんへお伝えしようと思います。

イタリアでは、夜にCalcioをすることは日常茶飯事です。どんなグラウンドへ行って
も、ナイターが完備されているんです。
ちなみに、この時期、ヨーロッパは日没がとても早いのです。12時ぐらいでもう
16時ぐらいの夕焼けが始まります。日本でいえば北海道みたいなイメージでしょう
か?!

さて、そのグラウンドですが、大人から子供まで実に幅広い年代から利用されていま
す(子供はプレイするとしても19時か20時までが最低限度です)。
週末は、プリマスクアドラ(トップチーム)やそのチームの年代を代表するチームが、
そして平日は10歳以下の少年チームや、アマチュアの大人が利用します。

ここで興味深いのが、アマチュアの大人の試合です。なんと7対7で公式試合を行う
のです。※日本でも非公式で7対7のカップ戦が行なわれていることは皆さんご存知
ですか?!

最近日本でも、大人の方々にフットサルが根付いてきていますね。
フットサルは少々スペースが狭く、すぐに相手にプレッシャーをかけることのできる
距離で行なわれます。そしてルールも、サッカーとは少し異なっています。そして何
より技術が必要不可欠です…。
相手より良いプレイを試みる、あるいは結果を残そうと思えば、余計に…。

一方、7対7は、日本の少年用コートぐらいの大きさのグランドで、大人たちがプ
レーするのです(あくまでイタリアでの話!)。
ですから、フットサルに比べると、スペースが広く、プレイを選択する判断の時間が
より多くあります。人数も多いので、息をつく間があります。
自分から遠い逆サイドにボールがある時など、サボろうと思えばタイミングを計って
サボれます(笑)。

技術ももちろん要求されるのですが、戦術(人員配置・攻守の時間帯・守備の連携
etc)でなんとか相手を防ごうと思えば、何とかなっちゃうんです。
フットサルも戦術が必要とされることは理解していますが、スペースの広さを考える
と、7対7の方がよりサッカーに近いということですね。

さて、過去に何度か7対7を観戦する機会はあったものの、実際にプレイすることは
なかった私、先日ついに「7対7公式戦デビュー」をしました!

私のポジションはCentrocampista(チェントロカンピスタ)。日本では中盤(MF)にあた
りますね。
イタリアでは、一口に中盤と言っても、その役割は多種多彩。フォーメーションに
よっては、呼び方や役割が変わってきます。
Regista(レジスタ…司令塔)、Incotrorista(インコントロリスタ…相手の攻撃の芽を
つむ役割を担うプレイヤー)、Tornante(トルナンテ…攻撃はサポート的役割が強く、
守備においてはしっかりとDFもサポートしなければならないプレイヤー)、Mezzala(
メッザアーラ…攻撃的なウイングに近いプレイヤー)、Mediano(メディアーノ…中盤
の中盤) などなど…。
※Trequartista(ファンタジスタ)は日本では中盤と思われがちですが、イタリアでは
攻撃的役割が強いのでAttaccante(FW的な役割)と考えられます。

セリエAでプレイする日本人選手に例えると、中田選手は現在パルマ(ローマやペルー
ジャではまた違った役割をしていました)でTornanteかMediano、中村選手は
Trequartista、柳沢選手はAla(イタリア語で「翼」という意味で要はウイングみたい
な感じです)ということになります。

さて私は、前半はMezzalaと後半はTrequartistaの役割を担いました。

試合開始前に自分自身で確認、心がけたことは、
1.チームメイトの名前
2.チャンスには迷わすシュート
3.ボールを奪われたら奪い返すためにファールも覚悟する
※一番良いのは1対1でしっかり奪う守備力をつけるということを忘れないでくださ

4.ボールを受けるタイミングで視野を確保する…です。

1.はすぐにはできませんが、何回か間違えていく度に覚えてきます。
とは言っても、イタリアには同じ名前が多いんですよね〜。同じチームに「アンドレ
ア」が2人、「ニコロとニコラ」なんてのはザラ。これがけっこうコミュニケーショ
ンを図る障壁となる可能性があります(笑)。

2.「決めてナンボの世界」であるイタリアでは、攻撃的プレイヤーがいくらナイス
なアシストをしても評価されにくいのです。だからチャンスでパスをするよりは、失
敗しても自分で責任を取る覚悟で積極的プレーを心掛けたわけです。

3.アマチュアでも、カウンターのパンチ力がかなりあります(これは文化の成せる
業でしょうか?!笑)。だから自分が奪われたことが原因で失点につながるのは避けた
かったので、攻守の切替はしっかりしようと考えたのです。

4.本気モードで足を削る…いや…しのぎを削り合う。激しいボールの奪い合いが展
開されるイタリアでは、ボールを受ける前に視野を確保していないと、確実に必殺仕
事人が現れ、ボールを奪われます。

では、実際に私にできたことと、できなかったこと。皆さんは、何だと思われますか
…?!

ここで皆さんへ伝えたいことは、4の「激しいプレッシャー」です。周りを見ていな
いとイメージができないものですが、しかし周りを見てイメージできるだけでは十分
ではありません(もちろん)。

イメージから生まれたいくつかの選択肢の中から、素早く一つの結論(プレー)を選
択・実行しなければ、自分のプレーはさせてもらえません。DFのアプローチは、とて
つもなく速いのです・・・。

私のポジションは相手チームからすれば危険なゾーンに位置しているわけですから、
当然プレッシャーは一番キツイです。DFのアプローチが速くて厳しいゆえに、体が自
然に「見えないプレッシャー」に負けて前を向けない状況が作り出されてしまいまし
た・・・。

仮に前を向けたとしても、スライディングが恐ろしく発達しているイタリアでは、守
備の間合いが存在していると言いましょうか、きれいにドリブルで抜きさることは至
難の業なのです。

この点については、現在日本から修行を積みにやってきている18歳の何人かのプレ
イヤーも言及していました。

 このように厳しい状況で、イタリアの攻撃的プレ
 イヤーたちは、どうするのか?!答えは、いたっ
 てシンプルです。

 まずは簡単に、サポートしてくれているプレイヤ
 ーにボールを落とす、いわゆるポストプレーを行
 ないます。これは、何も視野が確保できなかったからではないのです。
視野を広く保持した上で、最上の選択肢を取ったプレイなんです。

そして自身は、次に自分が利用できるスペースへ走りこむか、次のチャンスをうかが
うための準備を整えるのです。ダイレクトプレーが連続して展開される、そして、カ
ウンターが計算されたように見事に決まる訳は、こういったリズムを体が覚えている
のでしょう。だからサポートするプレイヤーの対応も素早いのです。

…一方日本において、攻撃的プレイヤーがこういった怖さを感じることがあるでしょ
うか?

何も、ファールで足を削るということを求めているのではありません。どこまで「相
手に自由を与えない」ということをプレイヤーに求めているか?ということを提唱し
たいのです。

ともすれば日本で反則と思われるフィジカルコンタクトは、世界では常識の範囲に入
ります。それが小さな頃から常識となっているサッカー強豪国と世界大会で初めて体
験する日本代表クラスレベルとのギャップは、アマチュアレベルから始まっているの
です。

「相手に自由を与えないサッカー」

これが日本サッカー協会の指導者養成講習会などで言われている「ぬるま湯サッカー
からの脱却」と考えられるでしょう…。
日本サッカー協会ナショナルトレセンコーチが、イタリア指導研修会で「中村選手は
イタリアで1年間プレイした結果、DFに隙を与えない間合いを持てるように成長し
た。そして判断が速くなった。」とコメントされていたことは、今も私の頭の中に
しっかりと残っています。

私がイタリアへ渡って、はや10ヶ月が経過しようとしています。イタリア人のプ
レーを肌身で感じて思うのですが、間違いなく日本のプレイヤーたちの技術は世界的
にも上位に位置づけられます。これは、「先駆者である指導者の方々が培った立派な
日本の文化・財産である」と、自信を持って言えることだと思うのです。

実際、日本人が魅せる技術には、イタリア人プレイヤーたちが賞賛の嵐を送ります。
「美しい」「素晴らしい」…と。しかし、その「日本の文化」を、厳しいプレッ
シャーの中で十分に発揮するには、もう一つ壁を乗り越えなければならない気がしま
す。

「日本の文化である技術力」と平行して判断力を養うために、厳しい守備を習慣づけ
ることができたとき、日本がさらなる飛躍を遂げ『決定力不足』になげくことのない
アタッカンテ(Attaccante=FW)が育ってくるのではないでしょうか…。

そして最後にもう一つ!これとは別に「見えないプレッシャー」があります!!!

「結果」を出すためには様々な逆境を跳ね返さないといけません。その一つに、「内
的(見えない)プレッシャー」と名づけましょう。

例えば私は、イタリアの友人に「俺はタイプ的に中村かな。イタリア人にはいないタ
イプやね。だから君のクラブが勝利に飢えているなら、得点を演出できる私をなぜ獲
得しないか聞きたいね!」と大口を叩いたのです。ゆえに何としても結果を残さなけ
れば、もう公式戦出場のチャンスは巡ってこないという状況に自分を追い込んだので
す。つまり、自分自身に「内なるプレッシャー」を与えたわけですね。

結果、一応皆から認められて来週も召集されましたから、「内的プレッシャー」に打
ち勝ち、及第点はもらえたのでしょう。言いたいことは、このプレッシャーに打ち勝
つためには、フィジカル的な準備よりもメンタル的な準備の方が比重は大きいという
ことです。

いくら実力があっても、気持ちが消極的になればその実力は半分も出せません…。そ
して周りの状況を理解し、素早く適応することも重要です。仮にシェフチェンコのよ
うな得点力があっても、ボールが回ってこないとその力を発揮できませんから…。

日本には、「謙虚な姿勢を重んじる文化」、「組織で責任を全うすることを重んじる
文化」、「冒険心よりも堅実心が自然に働く心理」といった古き良き文化があります
よね。でも、「内的プレッシャー」を克服するためには、時にそれらに反発する姿勢
も必要なのかもしれません。

と書きながら… 実際の試合では、当初、遠慮して控えめなポジションから出発した
ために、全然得点に絡むことができなかった私…。実は、「見えないプレッシャー」
に勝てない要素満載で戦いに挑んでいた気がする…苦笑。

だから後半には巻き返して、シュートも積極的に打ちました。でも、得点には至ら
ず、ナイスなパス4本がアシストになり勝利には貢献したものの、勝利(7対5)を
決定付けるプレイヤーにはなれませんでした…。

 
 最終的にはメンタル的な部分を強調したが故に、
 結局、自分が完全な日本人を主張したような今日
 この頃…でした?!…笑。

 今回は、プレイヤーとして「イタリアの守備」を
 体験したレポートでした。次回は、監督として 「イタリアの文化」を感じた考察をしようと思います。

それでは皆さん、Ciao.

Kawa


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